阿鼻あび)” の例文
呻く者、泣く者、喚く者、縛られたまま転げ廻る者、呪詛のろいの声を上げる者、……部屋の内はそれらの声で、阿鼻あび地獄を呈していた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
救いを求むる千余人の阿鼻あび叫喚——「猛火は正う押懸たり」と平家の作者はすごい筆致で語っているが、仏も衆生しゅじょうもろとも滅びて行ったこの地獄の日に
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
大仏殿の二階で全く逃げ場がない避難者たちの喚き叫ぶ声は、夜空に凄惨せいさんなひびきをつたえた。大焦熱の地獄、焔の底の罪人も、これほどとは思われぬ阿鼻あびの地獄であった。
ひとときまえの極楽山はたちまち騒然と落花狼藉ろうぜき阿鼻あび叫喚の地獄山と変わりました。
切られ、砕かれ、あぶられ、煮られ。阿鼻あびや叫喚七転八倒。死ぬに死なれぬ無限の責め苦じゃ。もしもその声、聞いたら最後じゃ。頭張り裂けクタバルなんぞと。高いとこから和尚おしょうの談義じゃ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まことにこの世ながらの畜生道ちくしょうどう阿鼻あび大城とはこの事でございましょう。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
の燈籠は一時に消え、歌舞の絃歌げんかは、阿鼻あびきょうや悲鳴に変った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百千の口からほとばしる悲鳴は、阿鼻あび叫喚の地獄であった。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大仏殿の二階の上には、千余人昇り上り、かたきの続くをのぼせじとはしをばひいてけり。猛火みやうくわまさし押懸おしかけたり。喚叫をめきさけぶ声、焦熱、大焦熱、無間むげん阿鼻あびほのほの底の罪人も、是には過じとぞ見えし。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
まことにこの世ながらの畜生道ちくしょうどう阿鼻あび大城とはこの事でございませう。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
阿鼻あび叫喚きょうかん、救けを呼ぶ声、さながら桶の泥鰌どじょうを見るようだった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
阿鼻あび地獄。叫喚きょうかん地獄。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)