阿父様おとうさま)” の例文
旧字:阿父樣
私は阿父様おとうさまを養ふ為に、いやしい商売を致して居ります。しかし私の商売は、私一人を汚す外には、誰にも迷惑はかけて居りません。
南京の基督 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
若い令嬢二人は、漱石氏の口から軽い皮肉が転がり出る度にかうした阿父様おとうさまを持つ事が出来た自分達の仕合せを喜んでゐるらしかつた。
「なぜでも——もし悪くなると愛想あいそをつかされるばかりですもの。だからいつまでもこうやって阿父様おとうさまと兄さんのそばにいた方が好いと思いますわ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
不好いけません不好ません! ルビー入りなんぞッて、其様そんな贅沢な事が阿父様おとうさまに願えますか?」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「オヤ不思議だこと、先刻さっきの流星が此様こんな物を落して行ったのではありますまいか、不思議と云えば此箱こそ実に不思議なもの、持って帰って阿父様おとうさまに御覧に入れましょう」
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
こと貴嬢あなたのお家なんぞは社会の上流に立って如何いかなる人物とも御交際が出来ますから阿父様おとうさまのお心掛次第で貴嬢のために如何なる上等のお婿むこさんをも択り出す事が出来ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「あなたはルウズヴエルトさんの坊ちやんぢやありませんか。そんな下様しもざまの子供達と一緒に遊ぶものぢやありません。阿父様おとうさまに叱られますよ。」
あの方が阿父様おとうさまの代から、ずっと御住みになっていらっしゃる、二条西洞院にしのとういん御屋形おやかたのまわりには、そう云う色好みの方々が、あるいは車を御寄せになったり
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「そして阿父様おとうさま、玉村侯爵のお手紙にると、この黄金の腕環を得た者は、同時に更に多くの宝物を得べき幸運を有すと書いてありますが、その宝物とは何んなものでしょう」
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
私は貴嬢あなた阿父様おとうさまに一番美味しい鮎を御馳走をするため近日のうちに極く適当な日を択んで一番汽車へ乗って自分で釣にって足りなければ漁夫の持っている鮎の一番上等なのを
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
... いわね、其代り阿父様おとうさまに願って、お前が此間じゅうから欲しい欲しいてッてるあれね?」と娘のかおを視て、薄笑いしながら、「あれを買って頂いて上げるから……仕方がないから。」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「嘘よ、阿父様おとうさまがそんな事をおっしゃるもんですか」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あ、吃驚びつくりした。何を仰有つたの。阿父様おとうさまがガナツシユですつて? ガナツシユつてどんな事なの、ねえ、貴方……」
阿父様おとうさま、何か珍しい事なら聴かせて頂戴ちょうだいな、あら鍵なんかおろしてひどいこと——」と呟けど、博士は知らぬ顔、「お前達の聴いても役に立たぬ事だよ」と、一声云ったばかりである。
南極の怪事 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
促せども娘は料理に熱心とて容易に動かず「阿父様おとうさま、モー少しお待ち遊ばして下さい。まだ二つ三つ先生にうかがいたい事がございますから。先生、ロールパンと申すのはどうしてこしらえます」
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
此方このかたが何さ、阿父様おとうさまからお話があった古屋さんの何さ。」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
阿父様おとうさま
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「私にはとても貴方の阿父様おとうさまにお目にかゝる勇気がありません。」大学教授は娘のうちの応接間で、もうすつかりあかくなつて、眼に一杯涙をためながら言つた。
阿父様おとうさま、なんですなんです」と、その跡を追いかけたが、博士は振り向きもせず、別荘の自分の書室に飛び込むやいなや、扉に鍵をピンとおろし、くだんの不思議なる書面を卓上に押しひろげ
南極の怪事 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
「だつて、君、うちの阿父様おとうさまは鈴木に入るかも知れないんだもの。入つたら二番目だと言つてたよ。」
「だつて阿父様おとうさま先日こなひだお話しになつたぢやないの。」と皇太子は自慢さうに言つた。
阿父様おとうさま、この人怜悧者りこうものなの、それとも馬鹿?」
阿父様おとうさま、これ誰方どなたなの。」