長芋ながいも)” の例文
あやしげなたい長芋ながいものおわん、こぶ巻、ご馳走ちそうといっても、そんな程度だが、倹約家の土肥半蔵にしては、大散財のつもりなのである。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これがむかし本陣ほんぢんだと叔父をぢつただゞつぴろ中土間なかどまおくけた小座敷こざしきで、おひらについた長芋ながいも厚切あつぎりも、大鮪おほまぐろ刺身さしみあたらしさもおぼえてる。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あのおひら長芋ながいものやうな、好い男の八百石取が、あんな下司げすな雜言を吐かうとは、平次も豫想外だつたでせう。
尤も尊い御身分の方だから、お平の長芋ながいもなどゝ悪口が出さうだが、くお美くしい、お奇麗な若殿様だ。それに学問こそお出来にならぬさうだが、小説類は何でも読んでらツしやる。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
「どうだね」と折のふたを取ると白い飯粒が裏へ着いてくる。なかには長芋ながいも白茶しらちゃに寝転んでいるかたわらに、一片ひときれの玉子焼が黄色くつぶされようとして、苦し紛れに首だけ飯の境に突き込んでいる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ちよいとノツペリして居るのと、三千五百石の旗本の跡取といふのを餌にして、若い女の撫で斬りですよ。世間の女はまた何んだつて、あんなおひら長芋ながいもが良いんでせう」
「ああ、もう訳はない」と長芋ながいもが髯の方へ動き出した。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、つとに入った長芋ながいもを老爺にくれた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)