鐘楼しゅろう)” の例文
旧字:鐘樓
ところがその寺へ盗人がやって来たので、その急を村人に知らすために鐘楼しゅろうの鐘をゴーンゴーンとき鳴らすというのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
がねだけ見える鐘楼しゅろうの内部。撞木しゅもくは誰かの手に綱を引かれ、おもむろに鐘を鳴らしはじめる。一度、二度、三度、——鐘楼の外は松の木ばかり。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これをきいてぼくたちむら子供こどもは、わっと歓呼かんここえをあげた。みなつきたいものばかりなので、吉彦よしひこさんはみんなを鐘楼しゅろうしたに一れつ励行れいこうさせた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
やがて仏殿にも廻廊づたいにとうとう燃え移ります。それとともに、大して広からぬ境内けいだいのことゆえ、鐘楼しゅろうも浴室も、南ろくの寿光院も、一ときに明るく照らし出されます。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
二人はたわいもない事を言って、山岡鉄舟の建てた全生庵ぜんしょうあん鐘楼しゅろうの前を下りてく。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ヴェニスは沈みつつ、沈みつつ、ただ空に引く一抹いちまつの淡き線となる。線は切れる。切れて点となる。蛋白石とんぼだまの空のなかにまるき柱が、ここ、かしこと立つ。ついには最も高くそびえたる鐘楼しゅろうが沈む。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鐘楼しゅろうしたにあじさいがきさかっている真昼まひるどきだった。松男君まつおくんうでによりをかけて、あざやかに一つごオん、とついた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
やがて仏殿にも廻廊づたひにたうとう燃え移ります。それとともに、大して広からぬ境内けいだいのことゆゑ、鐘楼しゅろうも浴室も、南ろくの寿光院も、一ときに明るく照らし出されます。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
わたしはあなたのためならば、どんな仕事でもして見せます。伏見の城の白孔雀しろくじゃくも、盗めと云えば、盗んで来ます。『さん・ふらんしすこ』の寺の鐘楼しゅろうも、焼けと云えば焼いて来ます。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ごんごろがねはひとまず鐘楼しゅろうした新筵にいむしろをしいて、そこにおろされた。いつもしたからばかりていたかねが、こうしてよこからられるようになると、なにべつのもののようなへんかんじがした。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)