じょう)” の例文
されどもかれは聞かざる真似して、手早くじょうを外さんとなしける時、手燭てしょく片手に駈出かけいでて、むずと帯際を引捉ひっとらえ、掴戻つかみもどせる老人あり。
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さきごろ、友人保田与重郎の文章の中から、芭蕉のき一句を見いだした。「朝がほや昼はじょうおろす門の垣。」
そこへ緑翹がともしびに火を点じて持って来た。何気なく見える女の顔を、玄機は甚だしく陰険なように看取した。玄機は突然起って扉にじょうを下した。そしてふるう声で詰問しはじめた。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
平常ふだんじょうを下してお藤を入れておくが、今晩は貴下あなたに差上げるので、開けたままだ。こちらへお入り。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くれぐれも脱心ぬかるなよ。「合点がってんだ。と鉄の棒の長さ一尺ばかりにて握太きを小脇に隠し、勝手口より立出たちいでしが、このは用心厳重にて、つい近所への出入ではいりにも、じょうを下すおきてとかや。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はただ、波の音が恐しいので、宵からかどじょうをおろして、奥でお浜と寝たっけ、ねえ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
八蔵の馬鹿! 外からじょうを下してく奴があるもんか。とむかばらたちの八ツ当り。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
金目のかかった宝なんざ、人が大切がって惜しむもので、歩るくにも坐るにも腰巾着こしぎんちゃくにつけていようが、じょうを下ろしておこうが、土の中へ埋めてあろうが、私等が手にゃあお茶の子さ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうかい、体はそれで可いとした処で、お前さんのような御身分じゃあ、じょう
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょう其時そのとき、どんと戸を引いて、かたりとじょうをさした我家わがやひびき
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)