銘撰めいせん)” の例文
切立ての銘撰めいせんの小袖を着込んで、目眩まぶしいような目容めつきで、あっちへ行って立ったり、こっちへ来て坐ったりしていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
夏は派手な浴衣ゆかたを着ている。冬は半衿はんえりの掛かった銘撰めいせんか何かを着ている。いつも新しい前掛をしているのである。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
着附きつけ盲目縞めくらじまの腹掛の上に、紫の肩いれある、紺と白とのらんたつの銘撰めいせんに、絳絹裏もみうらをつけ、黒繻子くろじゅすの襟かけたるを着、紺の白木の三尺を締め、尻端折しりはしょりし、上に盲目縞の海鼠襟なまこえり合羽かっぱ
例の寝台のあしの処に、二十二三の櫛巻くしまきの女が、半襟はんえりの掛かった銘撰めいせん半纏はんてんを着て、絹のはでな前掛を胸高むなだかに締めて、右の手を畳にいて、体を斜にして据わっていた。
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
着物も羽織もくすんだ色の銘撰めいせんであるが、長い袖の八口やつくちから緋縮緬ひぢりめん襦袢じゅばんの袖がこぼれ出ている。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
今着ている銘撰めいせんの綿入と、締めている白縮緬しろちりめんのへこ帯とは、相応に新しくはあるが、寝る時もこのまま寝て、洋服に着換えない時には、このままでどこへでも出掛けるのである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
黄いろい縞の銘撰めいせんの着物が、いつかじゅう着ていたのと、同じか違うか、純一には鑒別かんべつが出来ない。只羽織が真紫のお召であるので、いつかのとは違っているということが分かった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
僕は人の案内するままに二階へのぼって、一間ひとまを見渡したが、どれもどれも知らぬ顔の男ばかりの中に、ひげの白い依田よだ学海さんが、紺絣こんがすり銘撰めいせんの着流しに、薄羽織を引っ掛けて据わっていた。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
細君が銘撰めいせんの不断着に着更へて、博士の居間にはいつて来る。細君。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)