釣針つりばり)” の例文
こいつ、頭に鹿しかの角のやうなかぶとかぶつてるし、六本の足には釣針つりばりみたいな鈎爪かぎつめをもつてる。力が強いんだぞ。——うん、いゝこと思ひついた。
かぶと虫 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
と言いながら、一人の御客様はたもとから銀縁の大きな眼鏡を取出しました。玉のほこり襦袢じゅばん袖口そでぐちで拭いて、釣針つりばりのようにとがった鼻の上に載せて見て
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ここではよく釣針つりばりをとられるから、大きななまずかなんか、そんなものがいるかも知れない、という者がありました。
山の別荘の少年 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
僕は少年にちがいない。それだのに、なぜこの鏡の中には釣針つりばりひげの大人の顔がうつるのであろうか。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてクリストフも、何かをにおわせる微笑の釣針つりばりを、少しくわえないでもなかった。
「曲者の着物だよ、——少し釣針つりばりで引っ掻いたかも知れない。直ぐ行って見よう」
釣針つりばりをね、う、兩手りやうていたかたち
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
指の先へ釣針つりばりが刺さっているのだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
釣針つりばりらしいのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「曲者の着物だよ、——少し釣針つりばりで引つ掻いたかも知れない。直ぐ行つて見よう」
釣針つりばりのやうなかぎつめをどこへでもひつかけて、赤や青や黄や紫の自動車や汽船や大砲やタンクや乳母車を、五つも六つも、いつしよにひいて、ゾロッ・ゾロッと、お縁をはつて行きます。
かぶと虫 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
雄鶏おんどり牝鶏めんどりと遊ぶところへ、釣針つりばりをくれ、鳥の咽喉のどに引掛けて釣取るという。犬を盗むものもある。それは黒砂糖でよその家の犬を呼び出し、殺して煮て食い、皮は張付けて敷物に造るとか。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)