金的きんてき)” の例文
「無礼なことを言うな、茂七、——お前が見ているから当らないんだ。向うを向いているがいい。一本で金的きんてきを射止めるから」
私の脳髄の金的きんてきを射貫いてしまったものか、それ以後げんざいまで続いて、私は実に異様な、いまわしい癲癇てんかん持ちみたいな男になりました。
トカトントン (新字新仮名) / 太宰治(著)
「あッそうだった。けれど殿様、あのこってげしょう……例の、ほら、火消し仕度のおさむれえさ。ねえ! 金的きんてきだ。当たりやしたろうこいつア——」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのほかにもいろいろの額がある。たいていは家中かちゅうのものの射抜いた金的きんてきを、射抜いたものの名前に添えたのが多い。たまには太刀たちを納めたのもある。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さすれば彼女は必ずその場所をうかがう行動に出るであろう、これ労せずして金的きんてきを射る文殊もんじゅの妙智である。
この推理観察の金的きんてきともいうべきこの瓶と注射器と、鉄に附着している指紋が、岩形氏以外の誰のものでもない事と、その附着した位置や、力の入り工合が如何にも自然で
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
みる眼元、何ともいえない色気の露がたれている。やッぱり女は女ざかり、男がほしいに違いない。とするとこの金的きんてき、案外もろくポロリとおれに落ちてくるかもしれないわえ……
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ようよう、俺らあ、酔ったよ。金公きんこう金的きんてき、もっとしっかり、抱いてくんしょ」
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
私の知っている三河みかわの或る山村では、氏神うじがみの祭礼に金的きんてきあてる神事がある。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この帆村の言葉はどうやら鴨田理学士の金的きんてきちぬいたようであった。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いずれの見世みせやすむにしても、とう金的きんてきはかぎのおせんただ一人ひとり
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
まとひ金的きんてき、梯子は青竹
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
君の着眼は正に金的きんてきだったよ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)