里言さとことば)” の例文
里言さとことばにこれを雁の総立そうだちといふ。雁のそなへある事軍陣ぐんぢんごとし、とりになき事也、他国の雁もしかならん。田舎人ゐなかうどにはめづらしからねど都会とくわいの人の話柄はなしぐさにいへり。
初雪の積りたるをそのまゝにおけば、再びる雪を添へて一丈にあまる事もあれば、一度ふれば一度掃ふ(雪浅ければのちふるをまつ) 是を里言さとことば雪掘ゆきほりといふ。土をほるがごとくするゆゑにかくいふなり。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
山より雪の崩頽くづれおつる里言さとことばになだれといふ、又なでともいふ。あんずるになだれは撫下なでおりる也、るをれといふは活用はたらかすることばなり、山にもいふ也。こゝには雪頽ゆきくづるかりもちふ。
天気朦朧もうろうたる事数日すじつにして遠近ゑんきん高山かうざんはくてんじて雪をせしむ。これを里言さとことば嶽廻たけまはりといふ。又うみある所は海鳴うみなり、山ふかき処は山なる、遠雷の如し。これを里言に胴鳴どうなりといふ。