逸足いっそく)” の例文
銭形平次——江戸開府以来と言われた捕物の名人——と、子分の逸足いっそく、ガラッ八で通る八五郎が、鎌倉河岸でハタと顔を合せました。
政子の印象もよかったし、駒を馴らしてみると、案外な逸足いっそくなので、頼朝は厩の物音を聞くと夜半よなかでも、紙燭ししょくをかかげて
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新生、馬生、龍生、小勝——みんな初代圓生門下の逸足いっそくで、今は亡い得がたき手練てだればかりだった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
多分馬の前脚まえあしをとってつけたものと思いますが、スペイン速歩そくほとか言う妙技を演じ得る逸足いっそくならば、前脚で物を蹴るくらいの変り芸もするか知れず、それとても湯浅少佐ゆあさしょうさあたりが乗るのでなければ
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
カサドは一八九七年(または一八九八年)、スペインのバルセロナに生れ、パブロ・カサルスに就いてチェロを学び、少年時代早くも門下の逸足いっそくとして世に知られた。
で——法然門下中の逸足いっそくとしてこんどの処刑のうちには、真っ先にその名が書き上げられてあった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼が自慢の逸足いっそくも余りに烈しく打ち叩いて来たので、遂に乗りつぶしてしまったのである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かかる場合ばあいは、千をとぶ逸足いっそくももどかしく、一日の陽脚ひあしもまたたくひまである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬は、逸足いっそく赤兎馬せきとばは、まぎれもない赤面長髯の人、関羽だった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくら天下の早足はやあしとじまんをする燕作えんさくでも、騎手のりて巽小文治たつみこぶんじ、馬は逸足いっそく御岳みたけ草薙くさなぎ、それを相手に足くらべをしたところで、もとよりおよぶわけはなく、勝とうというのがしのつよい量見りょうけん
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さし上げれば、殿のお気には召しましょう。しかし臣下のそういう気持も無視して、ただ御自身の卯月より、逸足いっそくと見て、すぐお望み遊ばすわがままな御気性がてまえには、口惜しゅうてなりません
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平家方は、大庭景親をはじめ、重なる者は騎馬だったが、石ころの多い谷あいでは、名馬の逸足いっそくも、かえって敏捷びんしょうな敵にその脚元をぎられたり、ひづめつまずかせないため活躍の自由を欠いたりするので
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)