連繋れんけい)” の例文
然しその本当の意味は、どの職工もお互いが勝手なことが出来ないように、眼に見えない「責任上の連繋れんけい」を作って置くことにあった。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
それは事実の異なった二方面であって、互いに依存するものであり、常に連繋れんけいするものであり、大抵は互いに他を発生し合うものである。
オリヴィエの友人らが、各自に孤立して自分自分の仕事をしている間で、彼は一種の連繋れんけいの役目をなしていた。彼はあちらこちら行き来していた。
この年抽斎の次男矢島優善やすよしは、遂に素行修まらざるがために、表医者おもていしゃへんして小普請こぶしん医者とせられ、抽斎もまたこれに連繋れんけいして閉門三日さんじつに処せられた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
自分はその後、諸国をめぐって、あらゆる反信長けん連繋れんけいに成功した。中国の毛利どのもこれに加盟した。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おびえきつた姿で平次のところに泊り込んでをり、妹のお比奈は病人の介抱に隙もない有樣では、黒雲五人男と、この二人の間には、さしたる連繋れんけいがあらうとも思へません。
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
甘美な「愛」に貫かれて、ぼくたちはそれぞれの「個」から解放され、連繋れんけいしあうことができるかもしれないのに。——時計は、二本の針を垂直に12に重ねあおうとしていた。
ジャンの新盆 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
こういう一つ一つの例を眺めていると、夕顔でも南瓜でも、何かそれぞれの深い意味があるように思われるが、話の他の部分は連繋れんけいしていて、この点ばかりが独創であった筈はない。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ます目結めゆいらい源氏香図げんじこうずなどの模様は、平行線として知覚されることが必ずしも不可能でない。殊に縦に連繋れんけいした場合がそうである。したがってまた「いき」である可能性をもっている。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
正当にザイルで連繋れんけいしたものなら、重力の関係運動と、現場の個性から判断して、当然、阿曽がひきこまれていなければならないというので起訴されたのだが、阿曽は法廷で、私が助かったのは
白雪姫 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そうすれば私達が首になったとしても、残っている組織の根と緊密な外部からの連繋れんけいによって、少しの支障もなく仕事を継続することが出来る。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
彼らの娘は、二人の間の連繋れんけいであるとともに、暗黙な競争の種となった。二人とも娘を嫉妬しっと深いほど愛していた。
そのあいだ、どこで正成と会われたかは、山中の雲煙裡うんえんり、まるで神仙の会盟みたいで、なんの確証ものこっていない。が、両者の後の行動には、はっきりした連繋れんけいがとれている。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は、わざとのように「愛」という言葉を迂回うかいして生きてきた自分を思った。私にとり、「愛」はどうにもならぬ連繋れんけいの意識であり、その負担であり、身動きのつかぬ「関係」の別名でしかなかった。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
僕の写象には、何の論理的連繋れんけいもなく、無縁坂の女が浮ぶ。「僕は只雁のいる所を狙って投げたのだがなあ」と、今度は僕に対して岡田が云う。「うん」と云いつつも、僕は矢張やはり女の事を思っている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
規則正しい連繋れんけいを保っていたのである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
このことは工場にいるメンバーと極めて緊密な連繋れんけいがとれている場合にでも云えるのである。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
二人でうち建ててる社会的連繋れんけいと義務とについて、敬虔けいけんな尊敬をいだいていた。
須山たちと密接な組織的連繋れんけいを保っていることによって、浮き上る処か、面白いことには逆に、離れてみて須山や伊藤や(そして今迄の私も)眼先だけのことに全部の注意を奪われていて
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
クリストフとその眼に見えない友人らとの間に、神秘な連繋れんけいが織り出されてくるに従って、彼の芸術観に革命が起こってきた。彼の芸術観はいっそう広いいっそう人間的なものとなっていった。