近々きんきん)” の例文
面目めんぼくがあると云うんだがね、どうだろう、近々きんきんの内水島君は博士論文でも呈出して、博士の学位を受けるような運びには行くまいか。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今日はふだんとちがつて、君が近々きんきんに伊豆の何とか云ふ港から船を出して、女護によごしまへ渡らうと云ふ、その名残りの酒宴だらう。
世之助の話 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その年か翌年か岩倉いわくら大使が欧行に付き、親友の長与専斎ながよせんさいも随行を命ぜられ、近々きんきん出立とて私方に告別に参り、キニーネ一オンスのビンを懐中から出して
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その千秋さんが近々きんきん帰朝して令嬢と婚礼する。それが君には耐えられなかったのだ。君が度々ロンドンの千秋さんに手紙を出していることを、僕はちゃんと知っているのだよ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「はい、弦之丞様も近々きんきんのうちに、この江戸表へお越しなさいますそうな」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近々きんきん
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
このあいだお光さんのおっかさんが来て、三四郎さんも近々きんきん大学を卒業なさることだが、卒業したらうちの娘をもらってくれまいかという相談であった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は早速さつそく用談に取りかかつた。近々きんきん私の小説集が、この書肆から出版される。その印税の前借ぜんしやくが出来るやうに、一つ骨を折つて見てはくれまいか。——これがその用談の要点であつた。
塵労 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そこでこのあいだじゅうから適当の人物を人選中であったが、ようやく某氏に決定して、近々きんきん発表になるそうだ。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もっとも彼の考えはお嬢さんの上にばかりあったわけではない。たとえば近々きんきんとりかかるはずの小説のことも思い浮かべた。その小説の主人公は革命的精神に燃え立った、ある英吉利イギリス語の教師である。
お時儀 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そうすると主人の頭の禿げておらんのは、まだ禿げるべき資格がないからで、その内に禿げるだろうとは近々きんきんこの頭の上に落ちかかるべき運命であろう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「僕は近々きんきん上海シャンハイの通信員になるかも知れない。」
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「廃す? 廃すなら御廃し。——あの、小野はね。近頃忙がしいんだよ。近々きんきん博士論文を出すんだそうで……」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いえ、御願いと申しました所が、大した事でもございませんが、——実は近々きんきんに東京中が、森になるそうでございますから、その節はどうか牧野同様、私も御宅へ御置き下さいまし。御願いと云うのはこれだけでございます。」
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
近々きんきん洋行するはずになったんだが、阿父おとっさんの云うには、立つ前に嫁をもらって人格を作ってけって責めるから、兄さんが、どうせ貰うなら藤尾さんを貰いましょう。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
近々きんきんの中ロード・ケルヴィンを圧倒するほどな大論文を発表しようとしつつあるではないか。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宿では近々きんきん停車場ステーション附近へ新築をして引移るつもりだと云っていた。そうしたら、この臭だけは落ちるだろう。しかし酸っぱい御茶は奉天のあらん限り人畜にたたるものと覚悟しなければならない。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「実はこの着物で近々きんきん都落みやこおちをやるんだよ。朝鮮へ落ちるんだよ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「僕もね、こうやって三年越、鉄道の方へ出ているが、もういやになったから近々きんきんめようと思うんです。もっとも僕の方で罷めなけりゃ向うで罷めるだけなんだからね。三年越と云やあ僕にしちゃ長い方でさあ」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「でも兄は近々きんきん結婚いたしますよ」
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「私は近々きんきん投げるかも知れません」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)