てあひ)” の例文
転がつた無頼漢ならずものは、埃のなかで蛙のやうに手足をばたばたさせながらわめいた。附近あたりには同じやうな無気味のてあひがぞろぞろたかつて来た。
機會を見計つて自分に何か特にお話を請求しようといふ執心のてあひ、髮長き兒も二人三人見える、——總て十一二人。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
郊外生活の地続き、猫の額ほどな空地あきちに十歩の春をたのしまうとする花いぢりも、かういふてあひつてはなにも滅茶苦茶に荒されてしまふ。
機会を見計つて自分に何か特にお話を請求しようといふ執心のてあひ、髪長き児も二人三人見える、——総て十一二人。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
智慧自慢のてあひに限つて自分から生捕られる——これは何もえてきちに限つた事ではない。犬養木堂などはよく心得てゐて欲しい。
何故といつて、この世の中には、帝王の事だつたら、どんな些細ささいな事でも、きつと記録に書き残す歴史家といふ筆まめなてあひが住んでゐるから。
人間にも女中や下男の厄介になつて暮すやくざなてあひがあるやうに、蟻にも奴隷を置いて、その世話になつてゐるのがある。
「もしか私達の国が欧洲戦争に引張り出されるとして、誰が武器一つ取る事を知らないてあひに投票なんかするもんですか。」
学者や発明家などいふてあひは、一事に熱中して心を奪はれる結果、どうかすると、うつかりして身辺みのまはりの事を忘れるのが多い。
この頃好景気で、富豪かねもちといふ階級はうんと殖えたさうだから、さういふてあひはよくこの問答を味はつておいて貰ひ度い。
世間の富豪かねもちで、乃公おれは芸術が好きだといつて、それを自慢にするてあひは大抵先づ美術骨董へ手を出す事にきまつてゐる。
学者や芸術家といふてあひには、自分の研究や作物さくぶつに熱中し出すと、つい自分をも、世間をも忘れてしまふやうな人がよくある。して晩飯や借金の事などは。
それに歌咏みだの、俳諧師だのといふてあひは人殺しの口からでもいゝ、相手が自分と同じ風流人である事を聞くのを、何よりも嬉しく思つてゐるものなのだ。
そんなてあひ寄合よりあひだけに、芝居の蓋をあけようといふ者にとつて、役納めほど骨の折れるものは少くない。
博士の説によると、不良少年、白痴、巾着切……などいふてあひは、大抵酒飲みの子に生れるもので、世間に酒が無かつたら、天国はつい手のとゞきさうなところまで引張り寄せる事が出来るらしい。
飲酒家 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
とりわけ博士などと肩書のついたてあひに、そんなのが少くないやうだ。