躯幹くかん)” の例文
日本国江戸府の書生、爪中万二くわのうちまんじ市木公太いちきこうた、書を貴大臣、各将官の執事に呈す。生ら、賦稟ふひん薄弱、躯幹くかん矮小わいしょうもとより士籍に列するを恥ず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
津下四郎左衛門の容貌がの正高さんに似てゐたことは本文でも察せられる。しかし四郎左衛門は躯幹くかんやゝ長大で、顔が稍まるかつたさうである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
氏は躯幹くかん長大にしてたくましく、色が黒かったそうであるから、外観を見ては、その血管にいかに柔和な心があり
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その内に未醒みせい画伯の巨大なる躯幹くかんがノッソリ現われると、間もなく吉岡将軍の髯面ひげづらがヌッと出て来る。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
彼のがっかりした躯幹くかんは、室にさし渡しになって横たわっていた。着衣は大変乱れていたが、それはあるいは彼が眠ってるところから、飛び起きたのだろうと思われた。
躯幹くかんは大きいが、みなせて背中まで肋骨ろっこつが透けて見える。あわれに物凄ものすごい。またそれ等の人々の背を乗客席に並べて乗せた電車が市中を通ると、地獄車のように、異様に見えた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
殊に、三宅軍兵衛というのは、躯幹くかん長大で荒木流の捕手術をよくする上に、剣をつかうことは数度の実戦を経験して、それに法を加え、東軍流の名人として人もゆるしていたという。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
〔評〕南洲弱冠じやくくわんの時、藤田東湖ふじたとうこえつす、東湖は重瞳子ちやうどうし躯幹くかん魁傑くわいけつにして、黄麻わうま外套ぐわいとう朱室しゆざや長劒ちやうけんして南洲をむかふ。南洲一見して瞿然くぜんたり。乃ち室内に入る、一大白をぞくしてさけすゝめらる。
する。躯幹くかん、肩、頸、首、腕、手、指は心的表現の道具である
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
躯幹くかん長大にして、筋骨が逞しい。打見るところは、僅に四十歳をえたかとおもはれる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼は僕より躯幹くかん長大にして、活発かっぱつにかつ短気の男であったが、この時ばかりは何も手向てむかいだもせず、なぐられたままにその夜を過ごし、翌日は丁寧に礼を述べ他の下宿げしゅくに移ったことがある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)