身空みそら)” の例文
若い身空みそらで、そんな小さいことをくよくよ心配していると、君の姉さんのような病気に乗ぜられるかも知れないよ。
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そういう番士のお長屋の土塀へ、若い女の身空みそらをもって、いかに人目がないとはいえ、楽書きを書いて行こうとは、白痴でなければ狂人きちがいでなければならない。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ちんばになんぞ、ならにゃえいがなァ。若い身空みそらで、ちんばじゃ、なおっても、かようにこまるじゃろな」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
貴様も若い身空みそらじゃ、そう長持の中に隠れていずと、ちっとは広いところへ出てこいよ、壺中こちゅうの天地ということもあるから、それは長持の中もよかろうけれど
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何か仔細しさいの有りそうな、もとは良家の青年らしく、折角せっかく染めた木綿の初袷はつあわせを、色もあろうに鼠色ねずみいろに染めたと、若い身空みそらで仏門に入ったあじきなさをたんじていると
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
本来ならば修業最中のいまだ若い身空みそらで常磐津になっても落語家になってもこう万事万端がいいずくしじゃ、外見そとみはいかにもいいけれども、しょせん、永い正月はありませんやね。
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
だケエに十年も後家ごけ立デデせ、ホガガらワラシもらわらの上ララそだデデ見デも、羸弱キヤなくてアンツクタラ病氣ネトヅガれデ死なれデ見れば、派立ハダヂ目腐めくさ阿母アバだケヤエに八十歳ハチヂウ身空みそらコイデ
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
「なんらのあてもない身空みそら。甘えるようだが、そいつは一つご厄介をねがおうか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正己の政治熱はお粂のおっと弓夫とおッつ、かッつで、弓夫が改進党びいきならこれは自由党びいきであり、二十四歳の身空みそらで正己が日義村ひよしむら河合定義かわいさだよしと語らい合わせ山林事件なぞを買って出たのも
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)