踏段ふみだん)” の例文
二人とも、そこに突っ立ったまま、両手をポケットに入れ、素知そしらぬ顔で、踏段ふみだんのほうに気をくばっている。と、やがて、にんじんは、レミイをひじ小突こづく。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
それを柘榴口ざくろぐちといって、そこをくぐって、足掛の踏段ふみだんを上って、湯槽にはいるのである。自然湯槽は高くなっている。今のように低くなったのを温泉といっていた。
宗助そうすけ一番いちばんおくはうにある一きやく案内あんないされて、これへとはれるので、踏段ふみだんやうなもののうへつて、椅子いすこしおろした。書生しよせいあつ縞入しまいり前掛まへかけ丁寧ていねいひざからしたくるんでれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私は岩の清浄というよりはもっと幾分熱帯的に見える緑の植物が生えてる、大理石の台地のような大きな山のさびしい踏段ふみだんに出て来た事だけがわかりました。私は汚れない青い海を眺めました。
二三日って、午後の練習を終え、ヘンリイ山本君の運転する、ロオドスタアの踏段ふみだんに足をせ、合宿まで、帰ってくると、庭前の芝生に、花やかな色彩をあふれさせた、女子選手の人達が、五六人
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
私は、葉の繁つた、花の一ぱいついた枝を道にさし出してゐる丈の高い茨の傍を過ぎた。石の段々の狹い踏段ふみだんが見えた。それから——本と鉛筆を手にして、そこに掛けてゐるロチスター氏が見えた。
踏段ふみだんに腰をおろし、両手で頭を抱え、そもそもことの起こりは……と、考えてみた。たぶん、糸を遠くへ投げたつもりでいたのが、針だけ背中へひっかかっていたんだろう。で、彼はいう——
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)