貴客あなた)” の例文
……派出所だ裁判だと、何でも上沙汰かみざたにさえ持ち出せば、我に理があると、それ貴客あなた、代官婆だけに思い込んでおりますのでございます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴客あなたこそ御退屈でしょう。失礼ですけども私が只今ただいま珈琲こーひーせんじて別に珈琲ケーキをこしらえますから少々お待ち下さいまし
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「もし、もし、貴客あなた様は、もしか幸若八郎様とおっしゃりはしますまいか」
人面瘡物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
百合 (ざるを抱えて立つ)ええ、大事ござんせん。けれども貴客あなた御串戯ごじょうだんに、お杖やなんぞでおたたき遊ばしては不可いけません。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
察し顔に「そうですねーたれ貴客あなたに相応した娘さんがありますとちょうどいいけれども、誰かないかしらん。あの中川さんのお妹子いもとごさんが去年の暮にお国から出ておいでなすったそうです。貴客はまだ御存知ありませんか」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
貴客あなたは何方からいらっしゃいました」
柳毅伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
貴客あなたがたのお人柄を見りゃ分るに、何で和女、勤める気や。私が済まぬ。さ、お立ち。ええ、私が箱を下げてやるから。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
百合 ほんとうに、たよりのない身体からだでございます。何にも存じません、不束ふつつかものでございますけれど、貴客あなた、どうぞ御ふびんをお懸けなすって下さいまし。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
百合 ああ、貴客あなた、貴客、難有ありがとう存じます。……ほんとうに難有う存じました。(とにべなく言う。)
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はい、貴客あなたもしお熱いのを、お一つ召上りませぬか、何ぞおあがりなされて下さりまし。」
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴客あなた、五十鈴川で嗽手水うがいちょうず、神路山を右に見て、杉の樹立こだちの中を出て、御廟おたまやの前でほのぼのとしらみますという、それから二見ヶ浦へ初日の出を拝みに廻られまする、大層な人数。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴客あなた、全くそう申すんでございますよ。」と長火鉢の端が見えて、母親おふくろの声がする。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「先生、貴客あなた知っていらっしゃりやしませんか、その三十一文字の野郎てえのを、」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「しかし貴客あなた、三人、五人こぼれますのは、旅籠はたごやでも承知のこと、相宿でも間に合いませぬから、廊下のはずれのかこいだの、数寄すき四阿あずまやだの、主人あるじ住居すまいなどで受けるでござりますよ。」
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると貴客あなた、赤城の高楼たかどのの北の方の小さな窓から、ぬうと出たのは婦人おんなの顔、色真蒼まっさお頬面ほうッぺたは消えて無いというほどやせっこけて、髪の毛がこれからこれへ(ト仕方をして)こういう風
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴客あなた、ほんとの名を聞かして下さいましな。」
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)