讀經どきやう)” の例文
新字:読経
それはさゝやかな佛壇の前に、キチンと坐つて、一心不亂に讀經どきやうしてゐる、輪袈裟わげさを掛けた切髮の女の後ろ姿ではありませんか。
大抵たいていこれにはむかし名僧めいそうはなしともなつてて、いづれも讀經どきやうをり誦念しようねんみぎりに、喧噪さわがしさをにくんで、こゑふうじたとふのである。ばうさんはえらい。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
薪とる里人さとびとの話によれば、庵の中には玉をまろばす如きやさしき聲して、讀經どきやう響絶ひゞきたゆる時なく、折々をり/\閼伽あか水汲みづくみに、谷川に下りし姿見たる人は
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
此日には刀自の父榛軒が壽阿彌に讀經どきやうを請ひ、それがをはつてから饗應してかへす例になつてゐた。饗饌きやうぜんには必ず蕃椒たうがらしさらに一ぱい盛つて附けた。壽阿彌はそれをあまさずに食べた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
讀經どきやうや、——いまか、しづこころ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
いづれも眞黒な覆面、その間から、眼ばかり光らして、覆面越しの讀經どきやうの聲も、何んとなく陰に籠ります。
讀經どきやうや、——今か、靜こころ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
尤も檜の棺は天井と底と三方だけで、正面は開いたまゝ、其處に身を入れると、一ときは揉んだ讀經どきやうの聲につれて、棺の上に掛けた白絹を、彌太郎自身の手で顏のあたりまで下げるのです。