けん)” の例文
弟のなかなかきかない方が、やっと九歳で、通称けん三郎、あざな寛猛ひろたけ、後に養家の高橋姓に改めて、伊勢守となり、泥舟でいしゅうと号した人である。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それは普通ふつう無智むちおんなたいしてのことさ。IならS、Hくんでもきつとおとなしくするよ。」わたし自家じかけん遜の意味いみつたが、いくらかの皮肉ひにくもないとはへなかつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
けんとほる。君子終り有りきつ。○彖伝たんでんに曰く、天道はくだして光明。地道はいやしくして上行す。
地山謙 (新字旧仮名) / 片山広子(著)
前には断じて後にはけんす。燕王が英雄の心をるもたくみなりというべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
小さいけん三郎は、手もなく、兄の一郎に投げつけられて、したたかに背を大地へ打ちつけた。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は常に護符ごふのやうに、けんは亨る謙は亨るとつぶやく、さうすると非常な勇気が出て来てトンネルの路を掘つてゆく工夫のやうに暗い中でもコツコツ、コツコツ働いてゆける。
地山謙 (新字旧仮名) / 片山広子(著)
けんにして以て みづからぼく
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
謙は却ち謙遜、謙譲のけんで、へりくだることである。高きに在るはづのごんの山が、低きに居るべきこんの地の下に在るのである。たぶん私は一生のあひだ地の下にうづくまつてゐなければならない。
地山謙 (新字旧仮名) / 片山広子(著)