語部カタリベ)” の例文
われ/\のオヤたちの、此の国に移り住んだ大昔は、其を聴きついだ語部カタリベの物語の上でも、やはり大昔の出来事として語られて居る。
妣が国へ・常世へ (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
初めに、滋賀津彦のよみがえりの場合と、郎女の魂呼タマヨバいの場面とが出て来る。この二節を読んだだけで、もう語部カタリベオウナのいた時代の当麻タギマの里に、読者は引き入れられてしまう。
『死者の書』 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
語部カタリベの口にくり返されたと思はれる、成語を思ひ合せて「此が昔語りの天窟戸の条に言ふ天照大神隠れて常夜行くと言うたあり様なのだ」
古代生活の研究:常世の国 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
だが、さう言ふ物語りはあつても、それは唯、此里の語部カタリベウバの口に、さう傳へられてゐる、と言ふに過ぎぬフル物語りであつた。
死者の書 (旧字旧仮名) / 折口信夫釈迢空(著)
だが、さう言ふ物語りはあつても、それは唯、此里の語部カタリベウバの口に、さう傳へられてゐる、と言ふに過ぎぬフル物語りであつた。
死者の書 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
だが、さう言ふ物語りはあつても、それは唯、此里の語部カタリベウバの口に、さう伝へられてゐる、と言ふに過ぎぬフル物語りであつた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
日本紀の一部分と、古事記の中、語部カタリベの口うつしに近い箇所は、敍事として自然な描寫法と思はれる三人稱に從うて居る。
語部カタリベの生活を話す前に寿詞ヨゴトの末、語部の物語との交渉の深まつて来た時代のほかひの様子を述べなければならなくなつた。
国文学の発生(第二稿) (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
志斐老女が、藤氏トウシ語部カタリベの一人であるやうに、此も亦、この当麻タギマの村の旧族、当麻真人マヒトの「ウヂ語部カタリベ」、亡び残りの一人であつたのである。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「日本書紀葦牙アシカビ」と言ふ本を天王寺の古本屋から見つけて来て、神代の神の名をすつかり諳誦してしまひました。まるで小さい語部カタリベの様な姿です。
新しい国語教育の方角 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
オノが世が來た、とほくそ笑みをした——が、氏の神祭りにも、語部カタリベシヤウじて、神語りを語らさうともせられなかつた。
死者の書 (旧字旧仮名) / 折口信夫釈迢空(著)
併し此は、われ/\の祖先に共通であつた歴史的の哀愁が、語部カタリベの口拍子に乗つて、時久しく又、度々くり返されねばならぬ事情があつたのであらう。
信太妻の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
娯しみを失ひきつた語部カタリベの古婆は、もう飯を喰べても、味は失うてしまつた。水を飮んでも、口をついて、獨り語りが囈語ウハゴトのやうに出るばかりになつた。
死者の書 (旧字旧仮名) / 折口信夫釈迢空(著)
娯しみを失ひきつた語部カタリベの古婆は、もう飯を喰べても、味は失うてしまつた。水を飮んでも、口をついて、獨り語りが囈語ウハゴトのやうに出るばかりになつた。
死者の書 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
タノしみを失ひきつた語部カタリベの古婆は、もう飯を喰べても、味は失うてしまつた。水を飲んでも、口をついて、独り語りが囈語ウハゴトのやうに出るばかりになつた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
この思ひがけない心殘りを、お詠みになつた歌よ、と私ども當麻タギマ語部カタリベの物語りには、傳へて居ります。
死者の書 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
其が岐れて、呪詞の方は、神主ののりとと固定し、叙事詩の側は、語部カタリベの物語となつて行つたのです。
翁の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
国々の語部カタリベの昔から、国邑の神人の淪落して、祝言職ホカヒとなり、陰陽師オンミヤウジの配下となつて、唱門師シヨモジン千秋万歳センズマンザイ・猿楽の類になり降つても、其筋がゝつた物語は、神の口移しの歴史で
山のことぶれ (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
神代の物語として、語部カタリベの伝へた詞章には、威力ある大神隠れ給ふ時、木草・岩石に到るまで、恣に発言した。さうして到る処に、其声の群り充ちたこと、譬へば五月蠅サバヘの様であつたと言ふ。
語部カタリベの物語——其は葛城部カツラギベの伝承と名づくべきもので、記紀の此記述の根本となつてゐるものであらう——があつたとすれば、どれほど人生を美しく又ユタけく感ぜしめることであつたらうと
日本文学の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
神聖な物語を継承する資格即語部カタリベたる選ばれた力が吾子籠にあつたのだ。
「ほ」と言ふ語は早く忘れられて、専ら語部カタリベの口から移つて行つた歌詞となつて了うた。其と共に別の語が其位置をとつて、而も意味が一方に偏する事になつて来た。たゝると言ふのが、其である。
語部カタリベと言ふ職業團體——かきべ——が、段々成立して行つた。
即、語部カタリベの発生した所以である。
日本文学の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)