トップ
>
訥々
>
とつとつ
ふりがな文庫
“
訥々
(
とつとつ
)” の例文
鍬
(
くわ
)
をかついでいる
百姓
(
ひゃくしょう
)
の
親爺
(
おやじ
)
さんといったほうが適当であり、講義の調子も、その風貌にふさわしく、
訥々
(
とつとつ
)
として
渋
(
しぶ
)
りがちだった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
その
訥々
(
とつとつ
)
とした口調で、どうにか呑み込ませたのは、今日の昼頃から起った、笛の春日藤左衛門一家に起った出来事の
顛末
(
てんまつ
)
です。
銭形平次捕物控:090 禁制の賦
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
金五郎は、
訥々
(
とつとつ
)
とした語調で、話しはじめた。しかし、その眼は、ともすると、南階段の円柱のところへ吸いつけられた。そして、とちる。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
そのあとでは彼らによく職人
気質
(
かたぎ
)
というものを話して聞かせた、砥石に向って仕事をしながら
訥々
(
とつとつ
)
とした調子で古い職人たちの逸話を語るとき
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私の
訥々
(
とつとつ
)
たる説明をきき終ると、彼は非常に情けなそうな顔になった。私は彼を慰めるのに骨を折ったほどである。
日月様
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
訥々
(
とつとつ
)
と、痛心を吐く言葉には、どこか迫るものがあって、同じように、主家の
崩壊
(
ほうかい
)
に立っている藤左衛門は、敵の民とはいえ、
惻々
(
そくそく
)
と、情に於て、共に
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この歌を味うと、内容に質実的なところがあるが、声調が
訥々
(
とつとつ
)
としていて、
沁
(
し
)
み
透
(
とお
)
るものが
尠
(
すくな
)
いので、つまりは常識の発達したぐらいな感情として伝わって来る。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
訥々
(
とつとつ
)
たる口調で、戸石君の精神の
弛緩
(
しかん
)
を指摘し、も少し真剣にやろうじゃないか、と攻めるのだそうで、剣道三段の戸石君も大いに閉口して、私にその事を訴えた。
散華
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
赤面しながら
訥々
(
とつとつ
)
として口籠っている私なぞには、到底歯の立とうはずもないことであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
訥々
(
とつとつ
)
とした言葉に涙が交じって、自分の
腸
(
はらわた
)
を叩きつけるように言う藤六の前に、お春も、八五郎も、平次も泣いておりました。
銭形平次捕物控:092 金の茶釜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
むしろ
訥々
(
とつとつ
)
としていたが、ただ一生懸命に誠意を伝えようとするところが、よく相手の心をうごかした。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
訥々
(
とつとつ
)
として言葉は重かったが、その内容には人の胸をうつものがあった、それで玄蕃は意をうかがうように主君のほうへふりかえった。直政は満足そうに頷いて云った。
青竹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
一首の中に、三つも「らむ」を使って居りながら、
訥々
(
とつとつ
)
としていて流動の響に乏しい。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
鏡花氏とは反対に、語り口は
訥々
(
とつとつ
)
としていても、あふれるような含蓄のあったのが、酒仙といわれた大町桂月氏である。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その声だけが、しいんとしている衆生のうえに、強く、低く、流るるように、また、
訥々
(
とつとつ
)
として、際限のない底力をもって迫っているのが聞こえているだけであった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どうにも問い詰められて致方なく云ってしまった、まことに恥じいった次第ですと
訥々
(
とつとつ
)
として述べた。いかにもあたりまえ過ぎる言葉で、口にだして云うのは
寧
(
むし
)
ろおとなげ無くさえある。
一人ならじ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
凡
(
およ
)
そ洋行帰りとは思えぬ野暮ったい姿で、昔乍らの秋田訛で、
訥々
(
とつとつ
)
と自己紹介をするのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:17 白髪の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
が——しかし藤吉郎は、飽くまで誠意を
面
(
おもて
)
にあらわしていうので、相手を
睥睨
(
へいげい
)
したり、演舌をふるっている態度は決してない。
訥々
(
とつとつ
)
と解く真心が、熱となって、雄弁に聞えるのだった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
松助は
訥々
(
とつとつ
)
とした口ぶりで話しだした。
つばくろ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
訥々
(
とつとつ
)
たる調子ですが、思いの
外
(
ほか
)
の雄弁で、妙に聴く者の好奇心を焦立たせます。
奇談クラブ〔戦後版〕:09 大名の倅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
さらに、その弁も
訥々
(
とつとつ
)
ではあったが、
倦
(
う
)
まず、熱意をこめて
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
訥々
(
とつとつ
)
、素朴きわまる飛脚武士なのである。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
訥
漢検1級
部首:⾔
11画
々
3画
“訥”で始まる語句
訥弁
訥升
訥子
訥
訥庵
訥朴
訥吃
訥辯