見栄みばえ)” の例文
旧字:見榮
富んで居る国民の設計けあつて、ブリユツセルの博物館も此処ここのも立派な建築である。こと此処ここのは四方の庭園が広いので見栄みばえがして居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
彼女たちは自分の頭をかつて見た最大の頭よりも見栄みばえあらしめるために、一袋十銭のスキ毛を一ツずつ突込んで、遂に三十四十に及んだまでの事である。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
それにしても、見栄みばえのしない陶物すえものの壺を買うのに、どうして千貫もの銀が要るのか、納得なっとくできない。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
というのは、第一見た所がいかにも派手で、あざやかで、しかも図の様が変って珍しい。非常に綺麗なものであるから見栄みばえがある。材が檜であるから水々しく浮き立っている。
母がともしい髪を工面して、どうかこうかまげい上げる様子は、いくら上手じょうずまとめるにしても、それほど見栄みばえのあるではないが、それでも退屈をしのぐには恰好かっこうな慰みであった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼等は幕の開かぬ芝居に会へる想して、あまりに落着の蛇尾だび振はざるを悔みて、はや忙々いそがはしきびすかへすも多かりけれど、又見栄みばえあるこの場の模様に名残なごりを惜みつつ去りへぬもありけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
見栄みばえのしない青葉を誉の輪飾に編むのです。155
小野さんは姿よく着こなした衣裳いしょうを、見栄みばえのせぬ廊下の片隅に、中ぶらりんに落ちつけて、光る眼鏡を斜めに、突き当りを眺めている。何が出てくるのかと思いながら眺めている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
会場の中でも大きな四方硝子ガラスの箱のとびらをはずして真ん中へ敷き物を敷いて四ツの狆を陳列ならべました。数が四つというので、見栄みばえがする。見物が大勢それにたかってなかなか評判がよろしかった。
「その代り柄や色合はしっかり致しておりますからかえって御徳用でゲス。第一見栄みばえが他のものとは全く御覧の通り違いますから……近頃ではどなた様も消費経済とかいう思召おぼしめしで却ってこのようなのが、エヘヘヘヘヘ」
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)