見世先みせさき)” の例文
駄々だだがおもちゃばこをぶちまけたように、のつけられないすねかたをしている徳太郎とくたろうみみへ、いきなり、見世先みせさきからきこたのは、まつろうわらごえだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
年の暮に間もない左右の見世先みせさきに、幕だの楽隊だの、蓄音機だのを飾るやらそなえるやらして、電灯以外の景気をけて、不時の客を呼び寄せる混雑も勘定かんじょうに入れなければなるまい。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大きな造り酒屋の見世先みせさきにすわりながら酒の一番火入れなどするわが子のために覚え書きをつづり、桝田屋一代目存生中のはなしのあらましから、分家以前の先祖代々より困窮な百姓であったこと
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
神尾主膳と机竜之助とが、万字楼の見世先みせさきへ送り込まれようとする時に
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
伊豆石いずいし御手洗みたらしあらったを、くのをわすれた橘屋たちばなや若旦那わかだんな徳太郎とくたろうが、お稲荷様いなりさまへの参詣さんけいは二のぎに、れの隠居いんきょ台詞通せりふどおり、つちへつかないあしかせて、んでたおせんの見世先みせさき
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)