褄先つまさき)” の例文
と、けものの如きおめきをあげ、剣前何ものも無碍むげ、いきなり新九郎の平青眼を踏み割るが早いか、さっと、脳天から褄先つまさきへかけて斬り込んできた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
細い褄先つまさきやわらかくしっとりと、内端うちわ掻込かいこんだ足袋たびまって、其処そこから襦袢じゅばん友染ゆうぜんが、豊かに膝までさばかれた。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただほのかに宮のお召し物の褄先つまさきの重なりを見るにすぎなかったかつての春の夕べばかりを幻に見る心を慰めるためには、接近して行って自身の胸中をお伝えして
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
坐って、いま褄先つまさきを直していた佳奈は、そのまま手を止めて、不審そうに彼を見あげた。
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
褄先つまさきが乱れて、穿いていたものもくしてしまった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
向うの空茶店の蔭から、頭から褄先つまさきまで真っ黒に着流したひとりの浪人者、ふところ手をしてそれへ出てきながら
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その細腰を此方こなたへ、背をななめにしたすそが、はぎのあたりへかわらを敷いて、細くしなやかに掻込かいこんで、蹴出けだしたような褄先つまさきが、中空なれば遮るものなく、便たよりなさそうに、しかしかろ
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
暗かったからよくは見えないのであるが、年ごろが同じくらいで恋人の思われる点がうれしくて、恋が移ったわけではないがこれにも関心は持たれた。若君は衣服の褄先つまさきを引いて音をさせてみた。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
二年ほど前から肥り気味になって、胴の長い脚の短い生れつきの体が、よけい畸形きけいに見えて来ているが、黄金の太刀や、高貴な織物の小袖ばかまは、お館の尊厳をつつんで褄先つまさきも余さなかった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、勘三は、お稲の襟あしから褄先つまさきを、眼でなで廻して
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
髪の毛から褄先つまさきまでを、調べるような目でながめて
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)