けら)” の例文
けら殿どのを、ほとけさんむし馬追蟲うまおひむしを、鳴聲なきごゑでスイチヨとぶ。鹽買蜻蛉しほがひとんぼ味噌買蜻蛉みそがひとんぼ考證かうしようおよばず、色合いろあひもつ子供衆こどもしう御存ごぞんじならん。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
怜悧れいりに見えても未惚女おぼこの事なら、ありともけらとも糞中ふんちゅううじとも云いようのない人非人、利のめにならば人糞をさえめかねぬ廉耻れんち知らず
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
油断をしたありけらあわって逃げる。逃げおくれて流される。彼は好い気もちになって、じいと眼をつぶる。眼をいて徐に見廻わす。上には青天がある。下には大地がある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
今日までの唯一の手がかりは、『延喜式』六、斎院さいいんに「螻䒾」、同十五、内蔵に「螻蓑」とあるのみである。蓑を着た様が、短い硬い羽を有つけらの姿に似た所から来たのであろう。
蓑のこと (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
爺「なんですいおけらの虫ですと」
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
下 若木わかき三寸でけらありそこの
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
けらが一疋とび出して
小さな鶯 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
けらの兄さん、ちと、ご運動とか云って、「あさましきもの」に廊下へ連出されると、トトトン、トトトンと太鼓の音。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けらのねぼけ
小さな鶯 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
と、含羞はなじろんだ若い妓の、揃った目鼻の真中まんなかを狙って——おけらの虫が、もじゃもじゃもじゃ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一つ穴のおけらどもが、反対に鴨にくわれて、でんぐりかえしを打ったんですね。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)