藁靴わらぐつ)” の例文
私は、藁靴わらぐつ穿はいて、合羽かっぱを着た。両脚りょうあしは急に太くなって、頭から三角帽子を被ったので、まるで転がるように身体がまるくなった。
北の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
男は真綿帽子を冠り、藁靴わらぐつ穿き、女は紺色染の真綿をかめの甲のように背中にしょって家の内でも手拭てぬぐいを冠る。それがこの辺で眼につく風俗だ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
足袋たび藁靴わらぐつを足に用いるのは言うを俟たない。足袋にはしばしば美しい刺子さしこをする。藁靴の出来も形もまたいい。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
履は藁靴わらぐつであっただろう。これも、旅人の気持でなく、現在其処そこにいても、「信濃路は」といっていること、前の、「信濃なる須賀の荒野に」と同じである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
いずれもほとんど半裸体で足に藁靴わらぐつを穿きながら、その足でパタパタ地面をたたいてボルネオ言葉で話し合い時々大声で笑い出す。弓を引いている土人もある。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
雪明りの狭い田舎道を半里ばかり行くと、道はようやく山にさしかかって来る。疎林の間を、まだ新しい雪を藁靴わらぐつでキュッキュッと踏みしめながら勢子達が真先に登って行く。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
門松かどまつは雪の中へたて七五三しめかざりは雪ののきに引わたす。礼者れいしや木屐げたをはき、従者とも藁靴わらぐつなり。
門松かどまつは雪の中へたて七五三しめかざりは雪ののきに引わたす。礼者れいしや木屐げたをはき、従者とも藁靴わらぐつなり。
こう思い決めると、何様どんな困難があっても、吹雪をおかして外を歩いて見たい好奇心が矢の如く心を駆った。早速深く編み上げた藁靴わらぐつ穿いて、雪で吹き閉された戸を開けて外へ出た。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)