花菖蒲はなあやめ)” の例文
たゞ南谿なんけいしるしたる姉妹きやうだい木像もくざうのみ、そとはま砂漠さばくなかにも緑水オアシスのあたり花菖蒲はなあやめいろのしたゝるをおぼゆることともえ山吹やまぶきそれにもまされり。おさなころよりいま亦然またしかり。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
花菖蒲はなあやめ象嵌ぞうがんした刀の目貫めぬきが、かつての形のまま帯留おびどめの金具となって用いられてあるのだった。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は三十二歳になったけれども、同年輩の男の友人たちは、みずみずしくってまだ青年だ。武田麟太郎たけだりんたろうさん、堀辰雄ほりたつおさん、永井龍男ながいたつおさん、いずれも花菖蒲はなあやめだ。だけど、女の青春はどうも短かすぎる。
生活 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
花菖蒲はなあやめ、風もゆかりの身がくれに
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ただ南谿が記したる姉妹のこの木像のみ、外ヶ浜の沙漠の中にも緑水オアシスのあたり、花菖蒲はなあやめ、色のしたたるを覚ゆる事、ともえ、山吹のそれにもまされり。幼き頃より今もまたしかり。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
金子きんすは持ち合せていないし、何も礼につかわす物がないが……これはわしの刀に付けておる目貫めぬきで、鉄地に花菖蒲はなあやめ象嵌彫ぞうがんぼり作銘さくめいもないが、持ち馴れた品じゃ、かたみに上げるから納めておいてくれ
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土地の故参で年上でも、花菖蒲はなあやめ燕子花かきつばた、同じ流れの色である。……生意気盛りが、我慢も意地も無いまでに、身を投げ掛けたは、よくせき、と清葉はしみじみ可哀あわれに思った。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
花菖蒲はなあやめ
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美しい女のつまは、真菰まこもがくれの花菖蒲はなあやめ、で、すらりとむしろの端にかかった……
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)