縮尻しくじり)” の例文
「相手はあせり出したよ、あせると一つずつ縮尻しくじりを重ねて証拠を撒き散らして行くから、見て居るがよい、もう尻尾を掴むばかりだ」
ちょっと小言は云ったものの大して叱りもしなかったが、今から思えば縮尻しくじりだった……と、あくは帯を貰う。その翌る日はかんざしを貰う。……
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
親爺も頑固なら息子も強情だと、信長の機嫌が甚だよくない。政秀之を見て今日までの輔育が失敗して居るのに、更にまた息子の縮尻しくじりがある。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
わたしはそれから日がな一日櫃台デスクの内側でこの仕事だけを勤めていたので、縮尻しくじりを仕出かすことのないだけ、それだけで単調で詰らなかった。
孔乙己 (新字新仮名) / 魯迅(著)
町からたまたま来た刑事までもが……これは草川巡査と鶴木検事の一代の大縮尻しくじりかも知れない……などと言葉を濁して行ったりしたので、村の連中は最早もはや
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私が困るとマネージャーが助け船を出してくれたので、宴会は大成功に終りましたが、その席上でアメリカの流行語を知らないために大縮尻しくじりをしたことでありました。
お蝶夫人 (新字新仮名) / 三浦環(著)
……手前いたって、がさつでね、よくこういう縮尻しくじりをやらかします。
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
昨夜ゆんべの、水上署の大縮尻しくじりを、見ていたかい。沖でグルグルどうどうめぐりよ。見てるほうで気が揉めたくらいだった。……いやしかし、どうもこいつア、思ったよりも大きな事件になるらしいぜ」
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
ちげえねえ? そう考えりゃ、ゆうべとおとといの縮尻しくじりも、こッちにゃ大きな張合いとなる。何しろおれは二、三日息抜きをしたら、また毎晩でも山屋敷へもぐりこんで、こんだアあすこの縁の下を
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「相手はあせり出したよ。あせると一つづつ縮尻しくじりを重ねて證據をき散らして行くから、見てゐるがよい。もう尻尾を掴むばかりだ」
私の一生の縮尻しくじりで御座いました。女ってえものはヤッパリ魔者なんで……ヘヘヘ……。
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お紋のところからは三日に一度ぐらいずつ誘い出しの手紙が来ますが、あの晩の縮尻しくじり以来家にこもって考え事ばかりしていたのです。
併し、さすがの平次も、この時ばかりは恐ろしい縮尻しくじりをやりました。翌る朝早々と深川の島田町へ行くと、町内は唯ならぬ物のけはひ。
平次の縮尻しくじりも小さくはありませんが、幸七をお咲殺しの下手人と思い込んでいた、三輪の万七もあまり大きな顔は出来ません。
「馬鹿野郎、人の縮尻しくじりを宜い心持にする奴があるか——秋葉の親分は、手柄をあせり過ぎたんだ。氣の毒なことぢやないか」
庭の足跡が女物の水下駄の跡ばかりで、外から入つた曲者の足跡のなかつたのは手落だが、それくらゐの縮尻しくじりは氣の廻る惡人でもよくあることだ
「へエ——、誠に、面目次第も御座いません。世間並に高が繼母の細工か何かだらうと思つたのが大縮尻しくじりのもとで——」
弟の仕事場から、切出しを持って行ったのが大縮尻しくじりで、何にも知らない弟に罪をかぶせちゃ、見ているわけに参りません。
「飛んでもない、あつしは大變な縮尻しくじりをやつてしまひました。親分の顏へ泥を塗つた上は、呑氣にしちやゐられません」
「お前は默つて居ろ。金次が下手人でなかつたところでお前の縮尻しくじりの申し譯にはならないぜ——ところで、喜三郎親分」
したが、清水の旦那はすっかり残して尾久に引込んであの身上しんしょうこしらえ、お夏さんの父親は、商売の縮尻しくじりから、二三年前首を吊って死んだという話ですよ
したが、清水の旦那はすつかり殘して尾久に引込んであの身上しんしやうを拵へ、お夏さんの父親は、商賣の縮尻しくじりから、二三年前首を釣つて死んだといふ話ですよ
平次一代の大縮尻しくじりだ——せめてお時のところへ行つて、わびでも言つて來ることだ。百兩の金が本當にお時のものなら、年季ねんき奉公しても返す工夫をするよ
「俺の方も大縮尻しくじりさ、お小夜とお吉を殺した下手人はわかつたが、動きの取れない證據は無いから、ヌケヌケと眼の前に居ても、縛るわけに行かない」
銭形平次は、こうしてまた縮尻しくじりを一つ重ねました。風太郎と言われた怪盗珊五郎は、その場から行方知れず、赤井左門は翌る日都へ旅路に上りました。
錢形平次は、斯うして又縮尻しくじりを一つ重ねました。風太郎と言はれた怪盜珊五郎は、その場から行方知れず、赤井左門は翌る日都への旅路に上りました。
寛永から明暦、万治年間へかけて鳴らした捕物の名人、一名縮尻しくじりの平次は、水際立ったい男でもあったのです。
それにしても、縮尻しくじり平次と言われる人気者のお前が、若い娘をこんなムゴイ目にあわせるのはどうしたわけだ。
「三輪の兄哥、八の野郎がとんだ縮尻しくじりをやったそうで、面目次第もないが。——お半の方は白状したかえ」
「三輪の親分、八の野郎が飛んだ縮尻しくじりをやつたさうで、面目次第もないが。——お半の方は白状したかえ」
平次は近頃すつかり憂鬱いううつでした。お紋のところからは三日に一度位づつ誘ひ出しの手紙が來ますが、あの晩の縮尻しくじり以來家に籠つて考へ事ばかりして居たのです。
お前さんは、一ときも前に藤澤を通り過ぎた筈だが——といふと、八五郎親分、飛んだ縮尻しくじりをしましたよ。
幸ひ翌る日捕まつたからいゝやうなものの、さうでもなきや、島吉兄哥は飛んだ縮尻しくじりをするところさ
幸いあくる日捕まったからいいようなものの、そうでもなきゃ、島吉兄哥はとんだ縮尻しくじりをするところさ
この岡っ引にしては珍しく人間味のある男、「縮尻しくじり平次」とまで綽名あだなされる男が、縛った娘の若々しい肉を、自分から進んで打ち据えようとはなんとした事でしょう。
「八の野郎が飛んだ縮尻しくじりをやつたさうで、面目次第もないが、八の尻拭ひのつもりでやつて來たよ」
江戸開府以來の捕物の名人と言はれた錢形の平次が、幽靈いうれいから手紙を貰つたといふ不思議な事件は、子分のガラツ八こと、八五郎の思ひも寄らぬ縮尻しくじりから始まりました。
「また何か縮尻しくじりをやったのか、仕様のない男だ——まアいい、奉行所の方は、鎌鼬かまいたちにしておこう」
恐れ入りました。幾松は大した縮尻しくじりも無いに、難癖をつけられて、六年越奉公をした、俵屋を
「餘計な事ぢやないよ。親分につまらない縮尻しくじりをさせたくはないから言つて上げるんだ」
滅多に人を縛らぬ、一名縮尻しくじり平次は、こうして「雪の精」を見逃してしまったのです。
「いや、飛んだ縮尻しくじりさ。大阪まで物笑ひの種をきに行つたやうなもので——」
逢引の縮尻しくじりと見ると、憎さも憎しと、一刀を引抜いて忍び返しに引掛っている三之助を刺した——がさすがに武士の子で、長いので刺すのは刀の汚れとでも思った、短いのでやったらしい
「何でもない事さ。最初お前が言ったとおり佐吉を縛れば、お富を殺さずに済んだよ。今度は、平次一代の縮尻しくじりだ——が、ね八、いくら下手人と睨んでも証拠のない者を縛るわけに行かねえ」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
そして覺られないやうに、掘つて踏み荒した畑の土を平らにし、それでも不安心で箒を持つて來て掃いた——これは勘三郎の縮尻しくじりだつた。畑に箒目を入れる者はどこの世界にもあるわけはない
逢引の縮尻しくじりと見ると、憎さも憎しと、一刀を引拔いて忍び返しに引掛つてゐる三之助を刺した——が、さすがに武士の子で、長いので刺すのは刀の汚れとでも思つて、短かいのでやつたらしい
錢形の平次は、凡そ古文眞實くそまじめな顏をして、若い二人の女性に相對しました。捕物の名人と言はれてゐる癖に、滅多に人を縛らないから、一名縮尻しくじり平次ともいふ、讀者諸君にはお馴染なじみの人物です。
銭形の平次は、およそ古文真宝くそまじめな顔をして、若い二人の女性に相対しました。捕物の名人と言われている癖に、滅多に人を縛らないから、一名縮尻しくじり平次ともいう、読者諸君にはお馴染の人物です。
だが、錢形平次もこれほど、重大な縮尻しくじりをしたことはなかつたのです。
縮尻しくじりはお互だよ。——ところで八、今日は何日だつけ?」