ぷち)” の例文
がけぷちに枝を差しのべていた山百合と一緒に、その辺に咲いている野性の花をむしり取って来て、鉄柵を乗り越えて墓前に供えて置いた。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
この人がまだ普魯西プロシヤ王フレデリキ・ウイルレム四世の皇弟であつた一八四九年のある秋の日、御微行おしのびでライン河のかはぷちをぶらぶらしてゐた事があつた。
それからその親爺に連れられて、そこいらの河ッぷちの綺麗な座敷に通されてみるとイヨイヨ驚いたね。その親爺が坐っていても吾輩の立っている高さぐらいあるんだ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
にんじん——それに、とうさんだって、ここより水っぷちのほうがいいよ。草の上へ寝転ねころんどいでよ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
まるで青菜に塩のていで、考え込みながらふらふらと数寄屋橋すきやばし御門から西紺屋にしこんや河岸かしぷちへ出た。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「それでもさっきのあのかわぷちで大根を洗っていたぜ」と、半七は云った。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
最後に行つた家は河上の小一里るある辺で、そこいらは人家は数へるほどしかなく、河つぷちに沿つた段々畑の中を幅の広い国道だけがほの白く浮いて、次第下りに河原町の方へつゞいてゐた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
ガラツ八は路地から河岸かしぷちに通ずる、粗末な木戸を指しました。
泳ぎの達者な男がかはぷちをぶら/\してゐると、水に溺れかゝつた者の泣き声が聞えるのだ。その男はいきなり河に飛び込んで其奴そいつを助けてやつた。助けたのはかくいふロイド・ジヨウジぢやないか。
「木戸の向うは川岸かしぷちの往来ですね」