結願けちがん)” の例文
ちとお答えに窮しますな。……いや何、かもうまい。じつは主人高氏には、何やら結願けちがんのあるらしくて、それのかなうまでは、門松を
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかもそれを実行した迷信とも妄想もうそうともたとえようのない、狂気じみた結願けちがんがなんの苦もなくばらばらにくずれてしまって
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
の年、霜月しもつき十日は、かねて深く思召おぼしめし立つ事があつて、大納言卿、わたくしならぬ祈願のため、御館の密室にこもつて、護摩ごまの法をしゅせられた、其の結願けちがんの日であつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
見る人があやしがっているうちに結願けちがんの日になるとその蛇が死んでしまったが、蛇の頭の中から一つの蝶が出て空に昇ると見た人もあり、天人の形で昇ると見た人もある。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
結願けちがんの当日岩殿の前に、二人が法施ほっせ手向たむけていると、山風が木々をあおった拍子ひょうしに、椿つばきの葉が二枚こぼれて来た。その椿の葉には二枚とも、虫の食ったあとが残っている。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その結願けちがんの日がちょうど七月十五日の父の命日に当るようにした。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
結願けちがんの日から雨がしとしとと降った。さびしい今年の秋が来た。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
仁治三年十月二十八日から浄勝房以下の僧達を集めて、三七日みなぬかの如法念仏をはじめ十一月十八日に結願けちがんの夜半に道場でもって高声念仏し、それから自分で自分の腹を切って五臓六腑を取り出し
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
葉子はそういいながら立ち上がって行って、貞世を後ろからがいに抱きしめてやろうとした。しかしその瞬間に自分の胸の中に自然に出来上がらしていた結願けちがんを思い出して、心を鬼にしながら
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
結願けちがんの時種々の捧げ物を取り出でたのを法然は不受の色を表わして
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)