経廻へめぐ)” の例文
旧字:經廻
「いや真実ほんとうに。」と、その男も笑い出した。そして一順人々の手を経廻へめぐって来た時計を、そっと懐へしまいこんだ。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
京都では父の御機嫌伺いをするだけで、その日のうちに奈良へ行き、二三日間春の大和路やまとじ経廻へめぐりたいと思っていること、ただしこれは自分だけの考なので
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
紀州西牟婁むろ郡上三栖みすの米作という人は、神に隠されて二昼夜してからかえってきたが、その間に神に連れられ空中を飛行し、諸処の山谷を経廻へめぐっていたと語った。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
文治はもう此の島人を逃がしては此の島を出る機会おりがないと思いまして、いろ/\上手を使って、話もしかと分りませぬが、片言かたことまじりで交際つきあいながら、彼方かなた此方こなた経廻へめぐって
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ある時父兄の前に言出いいいでて、自分は一代法華いちだいほっけをして、諸国を経廻へめぐろうと思うから、何卒どうか家を出してくれと決心の色をあらわしたので、父も兄も致方いたしかたなく、これを許したから、娘は大変喜んで
千ヶ寺詣 (新字新仮名) / 北村四海(著)
わしたびからたびをふら/\と経廻へめぐるものぢやが、』と坊様ばうさまふんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし二十余家を経廻へめぐるうちに、ただ一カ所だけ、五百が仕えようと思った家があった。それが偶然にも土佐国高知の城主松平土佐守豊資とよすけの家であった。即ち五百と祖先を同じうする山内家である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)