端銭はした)” の例文
旧字:端錢
鹽「これ/\女中勘定をしておくれ、これお清、此の包をお前持って往ってお呉れ、これは端銭はしたで出して置くから、これはわしが持ってく」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今の腕車くるまに、私が乗っていたのを知って、車夫わかいしからで駆下りた時、足の爪をかれたとか何とか、因縁を着けて、端銭はした強請ゆするんであろうと思った。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
虎「それじゃア持合もちあわせていますから私が立替えて上げるが、端銭はしたはまけて置いておくれな、明日あした一円上げますからさ」
着流きながしと来て、たもとへ入れた、例の菓子さ、紫蘇入しそいり塩竈しおがま両提ふたつさげの煙草入と一所にぶらぶら、皀莢さいかちの実で風に驚く……端銭はしたもない、お葬式とむらいで無常は感じる、ここが隅田おおかわで、小夜時雨さよしぐれ
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わかいものが何だ、端銭はしたをかれこれ人中で云っている奴があるかい、見っともない。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
婆「生憎あいにくお釣がございません、お気の毒様で、何うかお端銭はしたがございますなら」
つけられた方は、呆れるより、いきなりなぐるべき蹴倒し方だったが、かたわらに、ほんのりしている丸髷まげゆえか、主人の錆びたびょうのような眼色めつき恐怖おそれをなしたか、気の毒な学生は、端銭はした衣兜かくし捻込ねじこんだ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)