端渓たんけい)” の例文
幸子はふと、姉の取り出した箱の中から端渓たんけいすずりが現れたのを見ると、父がそれを買わされた時の情景を思い浮かべた。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あやながら端渓たんけいで、よく洗ってあるのもたしなみですが、墨は親指おやゆびほどではあるが唐墨のかけらに違いなく、筆も一本一本よく洗って拭いてあります。
「若い時に高泉こうせんの字を、少し稽古けいこした事がある。それぎりじゃ。それでも人に頼まれればいつでも、書きます。ワハハハハ。時にその端渓たんけいを一つ御見せ」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お机には、端渓たんけいすずり龍華紋りゅうげもんすみ、文房具の四宝、いずれも妙品ならぬはない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この上にある端渓たんけいすずり蹲螭そんり文鎮ぶんちんひきの形をした銅の水差し、獅子しし牡丹ぼたんとを浮かせた青磁せいじ硯屏けんびょう、それかららんを刻んだ孟宗もうそう根竹ねたけの筆立て——そういう一切の文房具は、皆彼の創作の苦しみに
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
端渓たんけいの硯に向ふわらは髪黒う垂れて面照おもてりにけり
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その次には鬼瓦おにがわらぐらいな大硯おおすずりを担ぎ込んだ。これは端渓たんけいです、端渓ですと二へんも三遍も端渓がるから、面白半分に端渓た何だいと聞いたら、すぐ講釈を始め出した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この上にある端渓たんけいすずり蹲螭そんちの文鎮、ひきの形をした銅の水差し、獅子と牡丹ぼたんとを浮かせた青磁せいじ硯屏けんびやう、それから蘭を刻んだ孟宗もうそうの根竹の筆立て——さう云ふ一切の文房具は、皆彼の創作の苦しみに
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「いい色合いろあいじゃのう。端渓たんけいかい」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)