端本はほん)” の例文
それは端本はほんであつたやうだが、そんな本がまだほかにあるならば見たいと思ふけれど、誰に聞いても持つて居る人がないのは遺憾である。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
且つそれが端本はほんであったため遂にその書の版本を買うことを思い立ち、町の文房具屋の主人に依頼してこれを大阪あたりから取寄せて貰った。
それに、あゝ、なんとかの端本はほんか、と部屋頭へやがしらほんぞんじてりますから、なかうたこれから引出ひきだしましたのでは先刻せんこく承知しようちとやらでござりませう。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それはかなりの室で、そこには取って置きの幾冊かの法律の古本もあり、少しばかりの小説の端本はほんで補われ、弁護士としての規定だけの文庫には見られた。
どうもこんな本が端本はほんになっているのは不思議だと思いながら、こちらの方へ歩いて参って、にしき町の通を旦過橋たんかばしの方へ行く途中で、また古本屋の店を見ると
独身 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
文芸倶楽部、新小説、ムラサキ、古い女鑑じょかんという雑誌。浪六の小説本。紅葉全集の端本はほん
端本はほんが多うございますけれども、これだけ種類を集めますのが骨でございます」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
父は珍らしい学問好で、用のない冬の晩などは、字が見えぬ程煤びきつて、表紙の襤褸ぼろぼろになつた孝経やら十八史略の端本はほんやらを持つて、茶話ながらに高島先生に教はりに行く事などもあつたものだ。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そしてふとミシュレーの端本はほんをひらいた。彼はかつてこの史家の数ページを読んだことがあったけれど、そのフランス式な誇張や言語の陶酔や性急な調子などのために、あまり面白く思わなかった。
テーブルの片端には、赤っぽい古い端本はほんが一冊見えていた。書籍縦覧所の古い十二折型の体裁から見ると、それは小説の本らしかった。表紙には太い大文字で次の書名が刷ってあった。
それに、あゝ、なんとかの端本はほんか、と部屋頭へやがしらほんぞんじてりますから、なかうたも、これから引出ひきだしましたのでは、先刻せんこく承知しようちとやらでござりませう。それではたねあかしの手品てじな同樣どうやうなぐさみになりません。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
端本はほんになりましたけれど、五六冊ございましたよ。」
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)