こなし)” の例文
一方吾々下飯台の方は、幾月にも斯様こんなお手柔てやわらかなこきつかわれ方に遭遇でくわさないので、かえって拍子抜がして、変てこだがさすがに嬉しさは顔やこなしに隠されぬ。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
左の手に片袖をつかみ、右の手にて我左の袖をかかげしまま、左の二の腕を握り、右足を高欄へかけ、きつと見え、このこなしにてせりあげになる所もまた立派なり。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
いつか詞かこなしで、女が薄情な根性を曝露ばくろしたら、その時面と向ってそう云ってりたい。もううからお前が面をかむっているという事は知っていた。おれは胸が悪かった。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
あれよあれよ、古狐が、坊主に化けた白蔵主はくぞうす。したり、あのすごさ。さびしさ。我は化けんと思えども、人はいかに見るやらん。尻尾を案じた後姿、振返り、見返る処の、こなしおもむき
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
衣裳いしやうの好みや身体からだこなしこの種類の女としては水際だつてひんの好い物優しい所がある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
(画家こなしあり。令嬢しずかに。)ええ。年上でございますよ。それにきのうとは違いますの。(調子を変う。)しかし兎に角、お互に普通の人間でだけは無い事が分りましたのでございますね。
只左の中指に太い印形付きの黄金指環が変に目についた、其次の男は中肉中背の若い男だが、体のこなしから、互の会話振から一人で切廻したがる才子風の所がアリアリと現われて居る。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)