らい)” の例文
旧字:
往時むかしから仏像の創作には、一とうらいとか、精進潔斎とかやかましく言ひ伝へられてゐるが、まんざらさうばかりでもないのはこの楽書がよく証拠立ててゐる。
自分も巴里パリイ時時とき/″\その床屋へ行く。其れは髪の毛が一本でもちらばつて居ないのをらいとする此処ここでは自分で手際よく髪を持ち扱ひにくいからである。髪結かみゆひは多く男である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
口のうちで唱えていた観音経の声が、我を忘れて次第に大きな声になってゆく、気がつくと急に声を落し、また、っては、一刀三らいのこころを像に向ってらした。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして筮竹ぜいちくをひたいにあてて、祈念三らい、息をつめて、無想境に入ったと思うと、その相貌はまったく人間の肉臭を払って、みるみる聖者のごとき澄みきったものに変った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西大寺の静然じょうねん上人が参内した。腰はかがまり、眉は雪かと白く、まことに高徳の僧らしくみえた。折ふし、西園寺ノ内大臣実衡さねひらが見かけ、「あら、尊や。老いのすがしさ」と三らいした。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)