石仏いしぼとけ)” の例文
虎「ほか少女すもるを呼んで遊んでおいでな、あんなものを□□て寝ても石仏いしぼとけを□□て寝るようなもので、ちっとも面白くもなんともないよ」
彼は戸口かどぐちうづくまりて動かず。婢は様々に言作いひこしらへてすかしけれど、一声も耳にはらざらんやうに、石仏いしぼとけの如く応ぜざるなり。彼はむ無くこれを奥へ告げぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
御丈おんたけ三尺というのはない、小さな石仏いしぼとけがすくすく並んで、最も長い年月ねんげつ路傍みちばたへ転げたのも、倒れたのもあったでありましょうが、さすがにまたぐものはないと見えます。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだ唖者おしかな、石仏いしぼとけかな、無言の行者でござんすかな! では止むを得ぬ、俺の口から、今夜の企て話してやろう! 実はな、お前の天文の才、どのくらいあるかためして見よう
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
尾花たか生茂おいしげれる中に、斜めにたてる石仏いしぼとけは、雪山せつざんに悩む釈迦仏しゃかぶつかと忍ばる。——見ればこけ蒸したる石畳の上に。一羽の雉子きぎす身体みうち弾丸たまを受けしと覚しく、飛ぶこともならでくるしみをるに。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)