にらみ)” の例文
郷にったら郷に従えだと、講釈で聞いたんですが、いかな立女形たておやまでもあの舞台じゃあにらみが利かねえ、それだから飛んだ目に逢うんでさ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旦那、そんなこえゝ顔をして、おにらみなすつちやあいけません、旦那あ立派なお侍だ、わつちやあ田舎ものでございます
人はむなしく烏をにらみのゝしり、空肚へりたるはらをかゝへて輴哥そりうたもいでず、輴をひきてかへりし事もありしと、その人のかたりき。
この時は若くもあり、元気でもあり、その代り新米の勘定奉行で、にらみのきかなかったおそれはありましたが、随分辛辣と思われるほどの仕事もやって退けました。
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「知らないわよ。」と女は目を見張ってにらみ返し、「馬鹿。」と言いさまわたくしの肩をった。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
桂河は喘ぎながら、やおら席を離れた、そして静かに出入口のドアに近寄ると、とっさにドアへ鍵をかけた。そしてまた静かに元の席に戻って、立ったままきっと龍介をにらみつけた。
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かくす心と存ぜしなりと委細申立るに此時大岡殿與力をよばれ何やらん申渡され又家主勘兵衞と呼出よびいださるゝに勘兵衞は二人をにらみながら進み出づればコレ勘兵衞右勘太郎の商賣しやうばいは何を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
人はむなしく烏をにらみのゝしり、空肚へりたるはらをかゝへて輴哥そりうたもいでず、輴をひきてかへりし事もありしと、その人のかたりき。
鶴屋のにらみが怖いから、誰も口をきいてくれる者もなく、いよ/\今夜といふ今夜、あのお春坊のポチヤポチヤしたのが人身御供ごくうに上ることに決つたと聽いたら
かまやしません。今のうちににらみかして置かないと、増長してどんな事をするか解りやしません。それに旦那樣は下總しもふさの御領地の方へお出かけださうぢや御座いませんか」
闇の中に威嚇的な一とにらみをくれて、元の食堂に還った三郎兵衛
笑う悪魔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)