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痴呆
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ちほう
ふりがな文庫
“
痴呆
(
ちほう
)” の例文
旧字:
癡呆
一時的に狂態を演ずるところの
痴呆
(
ちほう
)
状態になる一種の病的現象というものは、狐が化かすという口碑伝説の
伝
(
つたわ
)
らない以前の日本にも
ばけものばなし
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
それがいつでも葉子の心を不安にし、自分というものの居すわり所までぐらつかせた。どうかして倉地を
痴呆
(
ちほう
)
のようにしてしまいたい。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
爪のない猫! こんな、
便
(
たよ
)
りない、哀れな心持のものがあろうか! 空想を失ってしまった詩人、早発性
痴呆
(
ちほう
)
に陥った天才にも似ている!
愛撫
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
富者はその美徳をあまり多く享有する事の罪を自覚するがゆえに、その
贖罪
(
しょくざい
)
のために種々の
痴呆
(
ちほう
)
を敢行して安心を求めんとする。
丸善と三越
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
痴呆
(
ちほう
)
のように何も思うこともなかった。ステッキにすがって静かに目をつぶると、ひとりでにうとうとと
睡気
(
ねむけ
)
がさして来た。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
▼ もっと見る
真の絶望というものは、ただ、人を
痴呆
(
ちほう
)
状態に置く。脱力した状態のままで、ただ何となく口に希望らしいものを
譫言
(
うわごと
)
のようにいわせるだけだ。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
あの時分の若い
痴呆
(
ちほう
)
な恋が、いつの間にか、水に
溶
(
とか
)
されて行く紅の色か何ぞのように薄く
入染
(
にじ
)
んでいるきりであった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ひとりは米屋で破産、ひとりは汚い女をおめかけに持って
痴呆
(
ちほう
)
になり、ともにふるさとの、笑いものであった。沼の水を渡って来る風は、とても臭い。
懶惰の歌留多
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
かかる破滅を予言する者は盲者であり、かかる破滅を恐るる者は
痴呆
(
ちほう
)
である。革命はジャックリーの種痘である。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
あらゆる恐ろしいもの、あらゆる醜いもの、あらゆる色彩、あらゆる動き、あらゆる音響が、彼の脳髄を
痴呆
(
ちほう
)
にし、彼の眼を
盲
(
めしい
)
にし、彼の耳を耳なえにした。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
波止場
(
はとば
)
で船を待っているうちに、空が
漸
(
ようや
)
く明り出した。雲が千切れながら、青い空を見せ始めた。船を待つ人は皆、
痴呆
(
ちほう
)
に似た表情をし、あまり口を
利
(
き
)
かなかった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
「早発性
痴呆
(
ちほう
)
と云うやつですね。僕はあいつを見る度に気味が悪くってたまりません。あいつはこの間もどう云う量見か、
馬頭観世音
(
ばとうかんぜおん
)
の前にお
時宜
(
じぎ
)
をしていました」
歯車
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一夜の遊女に
戯
(
たわむ
)
れるなぞというのではなく、軽率な感傷に
豪毅
(
ごうき
)
な精神を忘れたあげく、いっそあの女とこの土地に土着してしまったら
痴呆
(
ちほう
)
のように安楽であろうと考えるのだ。
流浪の追憶
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
お前だ! (目の前の村子が、この男の白熱した心と目に、妻に見えて来ている。しかし、これは、以前の
痴呆
(
ちほう
)
状態からの
錯誤
(
さくご
)
とは全くちがって、集中から来るエネルギッシュな倒錯である)
胎内
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
雪子は激動の極、少し
痴呆
(
ちほう
)
状態になつて
却
(
かえ
)
つて逆に
刺戟
(
しげき
)
を求めるこゝろから、もつと眼の前で惨劇の進むのに息詰まる興味を持つやうになつてゐた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
「
痴呆
(
ちほう
)
のような幸福だ」と彼は思った。そしてうつらうつら日溜りに
屈
(
かが
)
まっていた。——やはりその日溜りの少し離れたところに小さい子供達がなにかして遊んでいた。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
そして、大きな口をあけたまま、
痴呆
(
ちほう
)
のように、この圧倒的な人外境の風景に見とれていた。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
三郎はやがてひとつの態度を見つけた。無意志無感動の
痴呆
(
ちほう
)
の態度であった。風のように生きることである。三郎は日常の行動をすべて暦にまかせた。暦のうらないにまかせた。
ロマネスク
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
たとえば村の名物になっている
痴呆
(
ちほう
)
の男が往来でいろいろのおかしい芸当や身ぶりをするのを見ていても、少しも笑いたくならなかった。むしろ不快な悲しいような心持ちがした。
笑い
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
卑しむべき
痴呆
(
ちほう
)
の臭いがした。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
鋭くて厳粛で
怜悧
(
れいり
)
な文化の果てが、むしろ寂寥を底に持ちつつ取りとめもない
痴呆
(
ちほう
)
状態で散らばっている巴里。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
すぐ堪へ切れない内応者があつて、細胞はまた一時に爆発した。そしてすつかり困迷して
痴呆
(
ちほう
)
状態に陥つた雪子の心身へ、若く甘い魅惑は水の如く
浸
(
ひた
)
り込んだ。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
この普通常識から批判すれば
痴呆
(
ちほう
)
のような甘いお人好しの観念が、時にかの女の知性以上に働いて、かの女を非常に
謙遜
(
けんそん
)
にしたり、時には反対に人を寛大に感じさせ過ぎてかの女を油断に陥れる……
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
“痴呆”の意味
《名詞》
精神の働きが弱く呆けていること。
認知症。
(出典:Wiktionary)
痴
常用漢字
中学
部首:⽧
13画
呆
漢検準1級
部首:⼝
7画
“痴呆”で始まる語句
痴呆性
痴呆奴
痴呆者
痴呆面
痴呆人
痴呆症
痴呆的