疾風迅雷しっぷうじんらい)” の例文
しかも、それといっしょに室井屋と文字のよめる質屋札が出てまいりましたものでしたから、ただもうあとは疾風迅雷しっぷうじんらいの右門流——
いや、ご催促は申しあげましたが、疾風迅雷しっぷうじんらいのおはやさ。……もう逃げ足づいた義貞を都のすみまで、追いつめるまでにござります。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
というところから、秋日しゅうじつのごとくするどく、はげしく、また釣瓶落しのように疾風迅雷しっぷうじんらいに働くというので、こう呼ばれる丹波自慢の銘刀めいとう
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこで俄然がぜんその宏大な地方を根拠地として某国の活溌な軍事行動が疾風迅雷しっぷうじんらい的に起されようとしているのだ。うっかり油断をしていたが最後、いて帰らぬ破滅が来るばかりだった。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのうちに銭形の平次は、疾風迅雷しっぷうじんらいのごとく、仕事を運びました。
蜀を破ったこと疾風迅雷しっぷうじんらいだったが、退くこともまた電馳奔来でんちほんらいの迅さであった。で、勝ちおごっている呉の大将たちは、陸遜りくそんに向って
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぎょッとしながら、あわててそれなる秋楓といった御殿女中がふところ紙に手を添えたとたん!——まことに疾風迅雷しっぷうじんらいの早さでありました。
彼の性は、遅にして鈍重、もし丞相がこの時に、疾風迅雷しっぷうじんらいのごとく蜀に入り給えば、玄徳の緒業しょぎょうは、瓦を崩すが如く砕け去るにちがいありません
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一世を驚倒させたあの戦慄せんりつすべき切支丹きりしたん宗徒の大陰謀を、またたくうちにあばきあげ、真に疾風迅雷しっぷうじんらいの早さをもって一味徒党を一網打尽にめしとり
戦機はかんだ。また天来の声だ。常道ではいえない。戦前の作戦は、大事をとるから、ただ敗けない主義になりやすい。それがいざ戦に入ると疾風迅雷しっぷうじんらいを要してくる。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半弓に用いた毒矢を遠くから烱々けいけいと見ながめていましたが、それさえ検分すればもうじゅうぶんというように、さっさと向こう横町まで引きあげていくと、疾風迅雷しっぷうじんらいの命令一下——。
雑賀党は、一瞬のまに、根来の潰滅かいめつを見せられ、また秀吉軍の疾風迅雷しっぷうじんらいの勢いに驚き怖れて、戦わずして、雑賀孫一さいがまごいち以下の重なる徒党は、みな降人こうにんに出て、秀吉に伏した。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
叫ぶや、刃先の下をかいくぐって、右、左、まんなかと、疾風迅雷しっぷうじんらいの早さであっさり三人をのけぞらしておくと、さあ伝六ッとばかりに、弥三郎のあとを追って屋内深く駆け入りました。
飛鳥といいましょうか、疾風迅雷しっぷうじんらい、堂の両側からおどり上がって組みついて来た二人の者。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうなればまったくもう疾風迅雷しっぷうじんらいです。
「吉日を待たないことです。身分も慣例も構うことではありません。四隣の国々が気づかぬまに、疾風迅雷しっぷうじんらい、ご息女のお輿を、まず袁家の寿春じゅしゅんまで、お送りしてしまうことです」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奥州の北畠顕家あきいえが、北の精兵七千騎をひきつれ、長途、王軍をたすけるべく疾風迅雷しっぷうじんらいのように西下して、はや不破を越え、今日にも、近江愛知川えちがわには着くであろうとのことだった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きのう北越ほくえつに上杉勢と相搏あいうっていたかと思えば、たちまち伊勢いせの一を討ち、また返って、江州ごうしゅうの浅井をほふり、転じて朝倉を亡ぼし、更に叡山えいざんへ火の手をかけているという疾風迅雷しっぷうじんらいぶりである。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後図こうとの策も終り、浜松——岡崎——清洲と、着々、予定の進出をはかどってきているのに、従来、疾風迅雷しっぷうじんらいの早仕事ではしばしば世におどろかれてきた秀吉たるものが、なぜか、こんどは出脚であしがにぶい。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)