男衆おとこしゅ)” の例文
夫人 (一歩縋る)先生、あのここへいらっしゃりがけに、もしか、井菊の印半纏しるしばんてんを着た男衆おとこしゅにお逢いなさりはしませんでしたか。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この人も着物ないはずやのんに縞銘仙しまめいせん単衣ひとえを着てキチンとしてましたのんは、あとで聞きましたのんですが宿の男衆おとこしゅの着物を一時いっとき借ってましたんやそうです。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
……といえば「矢の倉」の男衆おとこしゅ。——中洲時分から附いている由良のところの男衆である。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
震災のころまでは芝居や寄席よせの楽屋に行くと一人や二人、こういう江戸下町の年寄に逢うことができた——たとえば音羽おとわ屋の男衆おとこしゅ留爺とめじいやだの、高嶋屋の使っていた市蔵などいう年寄達であるが
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「あの人はあれで学者のえらい先生なんですってね、男衆おとこしゅかと思ったら」
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
俳優やくしゃ男衆おとこしゅが運んだんですが、市電にも省線にも、まさか此奴こいつは持込めません。——ずうとくるまで通しですよ。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
多分四時半ぐらいと思われる頃(貞之助の腕時計も破れてしまっていた)御影みかげ町の玉置家の親戚しんせきから、女史と少年の安否を気遣って男衆おとこしゅを見舞いに寄越したので、それをしおに
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
結城ゆうき藍微塵あいみじんの一枚着、唐桟柄とうざんがら袷羽織あわせばおり、茶献上博多けんじょうはかたの帯をぐいとめ、白柔皮しろなめしの緒の雪駄穿せったばきで、髪をすっきりと刈った、気の利いた若いもの、風俗は一目で知れる……俳優やくしゃ部屋の男衆おとこしゅ
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
客は一統、女中たち男衆おとこしゅまで、こぞって式台に立ったのが、左右に分れて、妙に隅を取って、吹溜ふきだまりのようにかさなり合う。真中まんなか拭込ふきこんだ大廊下が通って、奥に、霞へ架けた反橋そりはしが庭のもみじに燃えた。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)