田舎侍いなかざむらい)” の例文
東片町ひがしかたまちにある山村氏の屋敷には、いろいろな家中衆もいるが、木曾福島の田舎侍いなかざむらいとは大違いで、いずれも交際上手じょうずな人たちばかり。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「実は、手前はこよい関東の方から、初めて京へ参ったばかりの田舎侍いなかざむらいで、道にまようて、ぼんやりと、考えていたもんですから」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いずれも田舎侍いなかざむらいで、西洋料理などは見たことのない連中のみで、中には作法さほうを知らぬゆえ、いかなるご無礼ぶれいをせぬとも限らぬと、戦々兢々せんせんきょうきょうとし
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
仲麻呂なかまろんでからは、日本にっぽんのこった子孫しそん代々だいだい田舎いなかにうずもれて、田舎侍いなかざむらいになってしまいました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
が、諸藩の勤番の田舎侍いなかざむらいやお江戸見物の杢十田五作もくじゅうたごさくの買妓にはこの江戸情調が欠けていたので、芝居や人情本ではこういう田五作や田舎侍は無粋ぶすい執深しつぶかの嫌われ者となっている。
仮りにだな——薩摩とか、長州とかいう田舎侍いなかざむらいがやって来て、この徳川の天下をくつがえし、江戸中へ火をつけて焼く、そういう暁になったら、貴様も江戸ッ子の一人として、どういう進退を
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
思いやりのないこの辺の田舎侍いなかざむらいがかわるがわる宿直とのいに来ていますから、自身の当番の時におちどのないようにと思いまして、どんな失礼なしぐさを宮様の御微行にしかけるかわかりません。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「君臣の仲じゃに、身なりがどうのと、儀式にとらわれた遠慮、水くさいぞよ。——一にも儀式、二にも儀式。あれは都の公方殿くぼうどののすることよ。織田は田舎侍いなかざむらいでいい」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小臣らはいずれも田舎侍いなかざむらいで、九重ここのえ御作法ごさほうにははなはだ心得がうすいもののみでござりまする。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
相良金吾は、ひそかに、田舎侍いなかざむらいを装った菅笠すげがさとわらじばきで、めんが手に戻らなければ、せめて、万太郎に取って大事な「ばてれん口書くちがき」の一帖だけでも取り返そうと、浅草の四ツ辻に立ちました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
豪農道家清十郎の門口に立っていた田舎侍いなかざむらいが、彼を見ると呼びかけた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おい、ばか力が勝つか、剣法が勝つか、おかへあがって試そうじゃねえか。大勢の客衆のなかで、おまえさんのような田舎侍いなかざむらいに子どもあしらいにされちゃ、あしたから大きな顔して淀の船頭はしちゃいられねえ。さっ、上がれ」
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)