田川たがわ)” の例文
「早えものさ。三年は三年でもおれとおめえが、あの田川たがわの娘芝居に一座して、信濃路しなのじを打ってまわったころとは世の中も変わったぜ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
主人と妻と女児むすめと、田のくろ鬼芝おにしばに腰を下ろして、持参じさん林檎りんごかじった。背後うしろには生温なまぬる田川たがわの水がちょろ/\流れて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
きり田川たがわの水を、ほのじろい、ざるき/\、泡沫あわを薄青くすくひ取つては、細帯ほそおびにつけたびくの中へ、ト腰をひねざまに、ざあと、光に照らして移し込む。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
好きな蛸狩たこがりでもしたらどうだと云ったので、それ以来「田川たがわの蛸狩」という言葉が友達間にだいぶ流行はやり出した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それを知ると葉子の全身は怒りのためにつめの先まで青白くなって、おさえつけても抑えつけてもぶるぶると震え出した。「報正新報」といえば田川たがわ法学博士の機関新聞だ。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
此二人の少女は共に東京電話交換局とうきょうでんわこうくわんきょくの交換手であって、主人の少女は江藤えとうひでという、客の少女は田川たがわとみといい、交換手としては両人ふたりとも老練の方であるがお秀は局を勤めるようになった以来
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
森「馬喰町ばくろちょう三丁目の田川たがわきましょう」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
だけがきずだが、至る処の堂宮どうみや寝室ねま日蔭ひかげの草はしとね、貯えれば腐るので家々の貰い物も自然に多い。ある時、安さんが田川たがわの側にひざまずいて居るのを見た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「オヤ、田川たがわさん。」
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
水のたのしみは、普通の井と、家内に居ては音は聞こえぬ附近の田川たがわで満足しなければならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)