父様おとっさん)” の例文
旧字:父樣
内の父様おとっさんも案じておりますから、貴方またその姉さんをお助けなさろうの何のッて、あすこへいらっしゃるのはお止し遊ばしまし。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おいら父様おとっさんはなし、母様おっかさんくなったし、一人ぼッちで心細かったっけが、こんな時にゃあさっぱりだ、なさけなくも何ともねえが、てめえは可哀そうだな。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「むむ、何それもあるけれども、私がかんがえで、家を売り、邸を売り、父様おとっさんがいらっしゃる処も失くなしたし。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雀だってチッチッチッチッて、母様おっかさんと、父様おとっさんと、こども朋達ともだちみんなで、お談話はなしをしてるじゃあありませんか。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだ、貴下あなた、そんな事を言っていますね。持つものか! なんて貴下あなた、一生持たないでどうなさる。……また、こりゃお亡くなんなすった父様おとっさんかわって、一説法ひとせっぽうせにゃならん。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何でも徳川様瓦解がかいの時分に、父様おとっさんの方は上野へへえんなすって、お前、お嬢さんが可哀かわいそうにお邸の前へ茣蓙ござを敷いて、蒔絵まきえの重箱だの、お雛様ひなさまだの、錦絵にしきえだのを売ってござった
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まちの人が春、夏、秋、冬、遊山に来る、桜山も、桃谷も、あの梅林も、菖蒲あやめの池もみんな父様おとっさんので、頬白だの、目白だの、山雀やまがらだのが、この窓から堤防どての岸や、柳のもとや、蛇籠の上に居るのが見える
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父様おとっさんとこの母様とが聞いても身震みぶるいがするような、そういうひどいめに、苦しい、痛い、苦しい、辛い、惨酷なめに逢って、そうしてようようお分りになったのを、すっかり私に教えて下すったので
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふむ、あんなやつの敷いたものに乗っかる奴が有るもんか。彼奴あいつ等、おい、みんな乞食だぜ。踊ってな、うた唄ってな、人に銭よウ貰ってる乞食なんだ。内の父様おとっさんなんかな、能もるぜ。む、うたいも唄わあ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何てッて頼んでも、母様は肯入ききいれないし、父様おとっさんは旅の空。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)