とぼ)” の例文
新字:
母人はまた母人で、この隱居を助けて、夜通し普請の折の木の片をとぼし、それを油火に替へたとやら。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その他いろいろの飾物があるのみならず、本堂の中には三千五千のバタの燈明がとぼって居るです。バタの光というものは菜種油なたねあぶらの光よりも非常に白く、ちょっとガスの火に似て余程明るいです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
始として兩御目付三奉行諸有司しよいうし小役人にいたるまで皆其家々の定紋ぢやうもん付きたる箱提灯はこぢやうちんとぼし立行列正しく評定所へ出席せられ威儀ゐぎ嚴重げんぢうに列座さるゝ有樣實にや日本の政所まんどころくもらぬ鏡の天下の善惡邪正じやしやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
新宅の旅籠屋はたごやもできあがるころは、普請ふしんのおりに出た木のきれとぼして、それを油火あぶらびに替え、夜番の行燈あんどんを軒先へかかげるにも毎朝夜明け前に下掃除したそうじを済まし、同じ布で戸障子としょうじの敷居などをいたのも
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)