火焙ひあぶ)” の例文
何月何日には見せしめのために、火焙ひあぶりの刑を処すると、近郷近在に触れを回しました。そして大勢見物人たちのひしめいている中で……
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
昌平橋しょうへいばし外を引廻しの上、以上五ヶ所へ捨札を建てて火焙ひあぶりの極刑に処せられるのですから、泥棒や人殺しなどとは、まるっきり話が違います。
それが自分の物かと、獣じみた姿を考えると、早くこんな腐れ損いは、小塚ッ原で火焙ひあぶりにして貰ったら、定めし、さっぱりするだろうと思った。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
結い立ての天神髷を振りこわして、白い顔をゆがめて、歯を食いしばって、火焙ひあぶりになって家中うちじゅうを転げ廻って、苦しみもがいている女の姿は……。
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『何んて事でせう? 旦那様ででもなけれや、誰もそんな事を考へつきはしませんね。私達は火焙ひあぶりになるのですか。』
すこしばかりの賄賂まひなひしみし御蔭にて憐れなる初花太夫は磔刑はりつけ火焙ひあぶりか。音に名高き初花楼も取潰しのほか候まじ
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「火事はひでえ、何んとかほかに。……火事は兇状でも重い方だ。……火焙ひあぶりってやつにされるんですからねえ」
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さながら弥次郎兵衛のように竹の大串にさして、突立てたのを、下に薪を積みはじめたところを見ると、この藁人形に火焙ひあぶりの刑を施さんとするものらしい。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ようし待っておれ、今にその罰で閻魔の庁へ行ってから鉄の刺叉さすまたにさされて、じりじりと鬼に火焙ひあぶりにされるからな! 見ておれ、じりじりと火焙りにされるのじゃぞ!」
親を殺せばはりつけ火焙ひあぶりでしょう、あなたは自分が密通をしたこと、密通をして産ませた自分の娘が、磔か火焙りになったということ、世間の人たちがそれを知っていることで
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
僕は小穴君の言葉通りに丁寧ていねいに睾丸へアルコオルを塗つた。その時の睾丸の熱くなつたことは火焙ひあぶりにでもなるかと思ふ位だつた。僕は「これは大変だ」と言ひながら、畳の上をころげまはつた。
僕の友だち二三人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
以上五ヶ所へ捨札を建てゝ火焙ひあぶりの極刑に處せられるのですから、泥棒や人殺しなどとは、まるつ切り話が違ひます。
火焙ひあぶりの刑に処せられた後、眼も鼻も口もない真っ黒けな焼死体になってから歩き出して、倒れたら粉々の灰になったということが出ていたような気がします。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
……エジプトの王様は代々、自分の妻を一晩ごとに取換えて、飽きた女を火焙ひあぶりにして太陽神に捧げたり、又は生きたままナイル河の水神様の鰐に喰わせたりするのを無上の栄華として楽しんでいた。
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あの野郎を縛つて下さい。駕籠の中の花嫁を刺し殺すやうな野郎は、磔刑はりつけ火焙ひあぶりにでもしなきや腹が癒えません」
その図は、西洋の火焙ひあぶりか何かの光景らしかった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あの野郎を縛って下さい。駕籠の中の花嫁を刺し殺すような野郎は、磔刑はりつけ火焙ひあぶりにでもしなきゃ腹が癒えません」
元の夫一刀斎勘兵衛を殺し、続いて、主人の雲龍斎又六を殺したとすれば、磔刑はりつけ火焙ひあぶりはまぬかれぬところでしょう。
「明日は札の辻でエロニモ師やガルベスフランセスコ師や、ヨハネ原主水様や、シモン遠藤様と一緒に磔柱はりつけばしらにかけられて、火焙ひあぶりにされるそうですよ」
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
元の夫一刀齋勘兵衞を殺し、續いて、主人の雲龍齋又六を殺したとすれば、磔刑はりつけ火焙ひあぶりはまぬがれぬところでせう。
放火は大抵火焙ひあぶりか磔刑はりつけ、軽くて獄門、遠島、自火でも時代によれば、たちの悪いのは入牢、闕所けっしょ、極く手軽なので手錠の上町内預けぐらいにはされたのです。
「親分さん、かたきを討って下さい、娘をこんな目にあわせた人間を、八つ裂きにも火焙ひあぶりにもして下さい」
サア、縛つてくれ、磔刑はりつけにでも火焙ひあぶりにでもしてくれ、——その代り、萬一俺の母親が餓死うゑじにするやうな事があつたら、俺は死んだつてお前達を安穩あんのんには置かないぞ
「親分さん、敵を討つて下さい。娘をこんな目に合せた人間を、八つざきにも火焙ひあぶりにもして下さい」
「兎に角、昨夜、仲吉を見たといふのは誰か、それを聽かして貰はうぢやないか。御主人、放火つけびは引廻しの上火焙ひあぶりだ。お前さんも、をひ一人を丸燒きにしたいわけでもあるまい」
「親分、是非それを見付けて、磔刑はりつけなり火焙ひあぶりなり、思い知らせてやって下さい」
「親分、是非それを見付けて、磔刑はりつけなり火焙ひあぶりなり、思ひ知らせてやつて下さい」
火焙ひあぶりや、磔刑はりつけにしては、お上のなさることながらあんまりでございます
江戸中の憎しみのかゝつて居る仲吉は、間違ひもなく引廻しの上火焙ひあぶりだ。
「なんという馬鹿なことをするんだ。御府内の火付けは、火焙ひあぶりだぞ」
「何んといふ馬鹿なことをするんだ、御府内ごふないの火付けは、火焙ひあぶりだぞ」
「今頃切支丹の詮議は可哀想でございます。三十年も四十年も前に轉んで、觀音樣もマリヤ樣も解らなくなつてゐる人達を、火焙ひあぶりや磔刑はりつけにしては、お上のなさることながらあんまりで御座います」
細工が過ぎて親分に見現わされた、——口惜しいが仕方がない。サア、縛ってくれ、磔刑はりつけにでも火焙ひあぶりにでもしてくれ、——その代り、万一俺の母親が餓死うえじにするようなことがあったら、俺は死んだってお前達を