こい)” の例文
又対岸の蘭領のリオ島ほか諸島が遠近につて明るい緑とこいあゐとを際立たせながら屏風の如くひらいて居るのも蛮土とは想はれない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
今宮内様は御紋附の羽織にこい御納戸色おなんどいろ面取めんとりの袴をつけて、前には煙草盆や何かを置き、此方こっちには煎茶の道具があり、側に家来が二人ばかり居ります。
無言で振り返った娘の眼の前に、一人の供侍ともざむらいを従えて、おおらかにたたずんでいる人物があったが、道服どうふくの下からくくばかまの裾が、こい紫に見えているところから推して、公卿くげであることがうかがわれた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
快活な風でよく話を仕懸ける人である。ウラルを越えていよいよ欧羅巴ヨウロツパはひつた。山の色も草木の色も目に見えてこいい色彩を帯びて来た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
臙脂ゑんじの中にこい橄欖オリイブを鮮かに交へた珍しい曙光しよくわうを浴びた我船わがふね徐徐じよじよとマラツカ海峡の西の出口ペナン島の港にはひつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)