潮時しおどき)” の例文
「船の出る潮時しおどきまでは後一とき(今の二時間)ほどしかない。その間にとくと見定めておきたいが、どこじゃ、その男女ふたりが隠れた部屋は?」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もうほんとうに潮時しおどきだった。もうほんの少したったら、彼らは二人でうまく事務室から飛び出すことができるのだ。
火夫 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
燻精には、何やら腑におちかねる点もあったが、今が引揚ひきあげ潮時しおどきだと思ったので、博士をいい加減かげんにあしらった。
開封した時からもう源氏の涙は潮時しおどきが来たような勢いで、内からき上がってくる気がしたものであった。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「隠したって隠しおおせるものじゃない。言う潮時しおどきに言ってしまわないと、後で後悔するよ」
金助のべらべらやり出した潮時しおどきを、お銀様も利用することを忘れませんでした。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そんなことをしていちゃあ、きっと明日あすの朝の潮時しおどきをはずしちまうぜ!」
まだ時間はチット早いけれども、ちょうど潮時しおどきじゃけにモウこのまま、離座敷はなれに引取った方がよかろうと思うが……あんな正覚坊連中でもアンタ方が正座に坐っとると、席が改まって飲めんでな。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いずれにしても今夜あたりが潮時しおどきだと思ったのである。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
またあとの大部隊も折悪おりあしく退潮時しおどきにかかったため、上陸を見合わせているうち、家康の早い防ぎ手に、一歩、先んじられてしまったのである。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ハンスが出ていったのは、まさに潮時しおどきだった。というのは、すぐそのあとで教師がドアをさっと開け、Kとフリーダとが落ちつきはらって机のそばに坐っているのを見ると、叫んだ。
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
曲者くせものは仕掛けて来やがった。大事な潮時しおどきだ。後からいて来い」
お千はいい潮時しおどきを外さず、ずかしそうに素直に謝った。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
潮時しおどきはここぞとばかり、客呼びの源七は弓の折れで立看板を叩きながら、いよいよ喚き捲くし、いよいよ胴間声をらして景気づける。すると一方から
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この頃の、潮の満干みちひは、どういう時刻になっておろうか。今朝は、引潮時ひきしおどきでござるか、潮時しおどきでござろうか」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丹波には、波多野秀治はたのひではるの一族が、やはり今を「潮時しおどき」として、しきりに騒ぎ出していた。この方面へは、明智光秀と細川藤孝ふじたかが、その治領にも接している関係から
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
櫓下やぐらした八幡はちまんや、深川のの空は、今を潮時しおどきにぞめいていた。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど日ぐれ時、夕飯の潮時しおどき
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)