温容おんよう)” の例文
或時あるときは松並木の間から、或時は断崖の上からそれを眺めて行く。その間湾を隔てて、いつも私達を見守っているのは、雲仙の懐かしい温容おんようである。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
「やあ、帆村君」警部は、青年探偵帆村荘六のなごやかな眼をみた。事件の真只中まっただなかに入ってきたとは思われぬ温容おんようだった。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
にしろとてもわれないものとおもんでいた肉親にくしん祖父じじが、もととおりの慈愛じあいあふれた温容おんようで、もだえているわたくし枕辺まくらべにひょっくりとその姿すがたあらわしたのですから、そのときわたくしのうれしさ
それは玄徳が人間の本性をふかくつめ、自己の短所によく慎み、あくまで他人との融和ゆうわに気をつけている温容おんようとも心がけともいえるが、悪く解すれば、容易に他人に肚をのぞかせない二重底
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にこやかに温容おんようをほころばせている大岡越前守忠相。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
が、いよいよ柔和に、温容おんよう
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)