“浮身(うきみ)” の例文
幸田露伴氏が今のやうに文字の考証や、お説教やに浮身(うきみ)を窶(やつ)さない頃、春になると、饗庭篁村(あへばくわうそん)氏などと一緒に面白い事をして遊んでゐた。
其れだから此(この)附髷(つけまげ)や帽の流行品などに浮身(うきみ)をやつして食べる物も食べずに若死(じに)をする独身者(もの)もあると云ふことである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
良(よ)しや眼前に屍(かばね)の山を積まんとも涙一滴こぼさぬ勇士に、世を果敢(はか)なむ迄に物の哀れを感じさせ、夜毎(よごと)の秋に浮身(うきみ)をやつす六波羅一の優男(やさをとこ)を物の見事に狂はせながら
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
妹の敵(かたき)を討つつもりで、本心にもない厚化粧に浮身(うきみ)をやつし、町内の若い者を集めて、駒次郎の気を引いた、——浮気な駒次郎はお才を振り捨ててお前のところへ来たが
それで趣味が高じて来るというと、良いのを探すのに浮身(うきみ)をやつすのも自然の勢(いきおい)です。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
このごろのお絹は、自宅へ男女の客を招いては勝負事に浮身(うきみ)をやつしています。
長く覚えていたであろうしその上世間の評判や人々のお世辞が始終耳に這入るので自分の器量のすぐれていることはよく承知していたのであるされば化粧(けしょう)に浮身(うきみ)を窶(やつ)すことは大抵(たいてい)でなかった。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
でも、銭形の親分ともあろう者が、日向(ひなた)にとぐろを巻いて、煙草(たばこ)の煙を輪に吹く芸当に浮身(うきみ)を
夫婦の御機嫌(ごきげん)をとり、折もあらば女と親しく口を利(き)いてみたいと、いろいろに浮身(うきみ)をやつしているので、今ほかの連中はまた一局に夢中になる頃にも、金蔵のみは女の消え去った路地口を
本心にもない厚化粧に浮身(うきみ)をやつし、町内の若い者を集めて、駒次郎の氣を引いた、——浮氣な駒次郎はお才を振り捨てゝお前のところへも來たが、女郎蜘蛛(ぢよらうぐも)の網に掛つた蟲のやうに
いろいろに浮身(うきみ)をやつして、ついにお豊の心を靡(なび)かせてしまいました。心は靡かないにしても、女をわが物とすることができました。その時のことを、竜之助はよく見て知っていたものです。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)